2021年6月10日

フィッシュバーガーから、海の未来を考えよう!

北海道大学大学院 市村敏伸

「エシカルはおいしい!!」でも、たびたび取り上げてきた「海の持続可能性」についての問題。日本は島国でありながら、深刻な漁獲高の減少という問題に直面しています。この問題を考える上でひとつのヒントとなるのが、海外での事例を知ることです。今回は、海外での持続可能な漁業への取り組みについて、美味しいフィッシュバーガーを食べながら知ることができる。そんな"オイシイ話"をご紹介します。

【撮影:山本謙治】

漁獲減に直面する日本の漁業
ヒントは、ノルウェーにあり?

海に囲まれた島国に暮らす我々の食生活にとって、シーフードは欠かすことのできない重要な食材の一つ。

しかし、いま日本の漁業は「魚が獲れない」という深刻な問題に直面していることをご存知でしょうか。日本での漁獲高は、年間約1200万トンを記録した1988年のピーク時から年々減少し、2019年には約400万トンと1/3にまで落ち込んでいるのです。

この原因は様々ですが、大きいとされているのが魚の獲り過ぎや、漁業に従事する漁業者の減少などの問題。まさに今、日本は漁業を持続可能(サステナブル)なあり方に転換する必要に迫られています。

そんな日本にとって、持続可能な漁業のひとつのロールモデルとなるのが、北欧のノルウェーでの取り組みです。ノルウェーはかつて、日本と同じく漁獲高が激減したものの、魚の資源量などに配慮した持続可能な漁業へと転換して漁獲高の回復に成功した、いわば"海のサステナビリティ先進国"です。

そして、現在、そのノルウェー産のシーフードを使った「海のサステナビリティ」をテーマにしたフィッシュバーガーが都内で提供されている!そんな情報を掴んだ「エシカルはおいしい!!」編集部は、さっそく試食してきました。

食べて、海の未来考える
"持続可能なフィッシュバーガー"

selectS_02.jpg

今回、海のサステナビリティをテーマにした「Sバーガー」を体験できるのは原宿駅近くの「シンシア・ブルー」。

selectS_03.jpg

こちらのお店は「エシカルはおいしい!!」でも持続可能な海のあり方を発信されている佐々木ひろこさんが代表を務める料理人ネットワーク「Chefs for the Blue」のメンバーでもある、石井真介シェフが昨年オープンされたサステナブル・シーフードをテーマにしたお店です(「シンシア・ブルー」についての詳しい紹介はこちら)。

selectS_04.jpg

「シンシア・ブルー」で今回、ノルウェー産シーフードとの期間限定コラボで提供されているのは、サバとサーモンを使った2種類のフィッシュバーガー。どちらの魚種も持続可能性に配慮して漁獲されているとのことですが、まずはそのフィッシュバーガーを味わってみましょう。なお、今回は特別にサバとサーモンともにハーフカットずつ試食していきます。

selectS_05.jpg

まず、サーモンタルタルのフリットをサンドした「ノルウェー産サーモンのタルタルバーガー」から。

selectS_06.jpg

ひとくち食べると、タルタルフリットの下に敷かれたフレッシュトマトとルッコラの爽やかな風味の後に、サーモンタルタルのリッチな味わいが口に広がります。さらに、そこへ燻製チーズが入ることでより複雑な味わいに。ボリューム感がありながら、最後まで飽きずに美味しく楽しむことができます。

さて、続いてはサバに味噌オランデーズソースをあわせた「ノルウェー産サバ味噌オランデーズバーガー」

selectS_07.jpg

このバーガーの特徴はなんと言っても、「サバと味噌」という日本人には馴染み深い食材の組み合わせです。味噌オランデーズと脂がたっぷり乗ったサバ、そこへアボカドとニンニクマヨネーズが加わることで、実にゴージャスな旨みが口いっぱいに広がります。アクセントになるのは、アボカドの下に仕込まれたガリと春菊。リッチな味わいに爽やかさを加えてくれます。

サバ味噌バーガー、サーモンタルタルバーガー、どちらも多層的な味わいが存分に楽しめる、フレンチをベースにした「シンシア・ブルー」らしいフィッシュバーガーでした!

selectS_08.jpg

今回のノルウェー産シーフードとの期間限定コラボは、ノルウェー水産物審議会が主催し、地球にやさしいサステナブル習慣の選び方を伝えるプロジェクト「Select Sの一環。このキャンペーン期間中は、「シンシア・ブルー」に加えて、"サステナブル・グリル・レストラン"をテーマとする「ザ・バーン」でもノルウェー産サーモンを使ったフィッシュバーガーが販売されています

selectS_09.jpg

Seafood from Norway PR事務局提供

ところで、このノルウェー産のシーフード、海のサステナビリティへの配慮のポイントは一体どこにあるのでしょうか

漁獲量を回復させた
ノルウェー漁業の工夫とは

ノルウェーにおける漁業の大きな特徴のひとつが、資源管理をきちんと行い、漁業を続けながらも魚の資源量が減らないよう工夫を行なっている点です。

今回のキャンペーンで提供されている魚種のうち、サバはノルウェーで漁獲された天然魚を使用しています。ノルウェーではサバの漁獲にあたり、海のなかの魚の資源量に基づいて、漁船ごとに漁獲の上限量を設定。こうすることで漁業者は、十分に成長し、単価の高い個体を狙って漁獲を行い、未熟な魚が成長前に漁獲されることを防ぐことができます。

ノルウェーでは一時期、ニシンの乱獲などによって漁獲量が大幅に減少しましたが、こうした漁獲枠などの工夫によって、近年では漁獲量が大幅に回復しています。漁獲量の落ち込みが深刻な課題となっている日本ですが、ノルウェーの資源管理方法に学ぶべきところは多いかもしれません。

また、ノルウェーが取り組む漁業者の労働環境改善の工夫にも注目です。ノルウェーでは漁獲枠を設定し、美味しく脂が乗ったサバなどの天然魚のみを漁獲し流通させることで高い収益性を実現。その結果、ノルウェーの大型漁船では船内にラウンジやジムなどが完備されるなど、労働環境の改善が進んでいます。近年は若い漁業者も増加しており、漁業者の減少が進む日本が学べるポイントがここにもありそうです。

そんなノルウェーの"Sustainable"(サステナブル)な"Seafood"(シーフード)を味わえる、「Select S」プロジェクトでのコラボフィッシュバーガーの発売は、「シンシア・ブルー」が6月30日(水)まで「ザ・バーン」が6月18日(金)までの期間限定。詳しくはプロジェクトの公式HPをご確認ください。

皆さんも、美味しいフィッシュバーガーを味わいながら海の未来を考えてみてはいかがでしょうか。

※本サイトに掲載の文章の部分的な引用を希望される場合は、サイト名・記事タイトル・著者を明記の上でご利用ください。また引用の範囲を超える文章の転載・写真の二次利用については編集部の許諾が必要です。

プロフィール
市村敏伸(いちむら・としのぶ)
1997年生まれ、一橋大学法学部卒業。大学在学中にライター活動を開始し、現在は北海道大学大学院農学院に在籍中。専門は農業政策の形成過程に関する研究。
市村敏伸の記事一覧

最新記事

人気記事