2021年5月20日

スーパーのまとめ売りはエシカルじゃない?

食品ロス問題ジャーナリスト 井出留美

国内外のエシカルな食に関する話題は取り上げられることが多いですが、では、実際に我々・消費者は生活のなかでどのようなポイントを意識すれば"エシカル"になるのでしょうか?そんな常の食生活のなかでも意識できるエシカルについて、食品ロスジャーナリスト・井出留美さんに教えて頂きます。今回のテーマは「スーパーのまとめ売りはエシカルじゃない?」です。

中学校の家庭科でも教わる原則
「まとめ買いは無駄を生みやすい」

「量が多くて割安の方がお得?」

とある講演会でのこと。講演を終えた私に、一人暮らしをしている70代女性が質問しました。

「キャベツを使いきれずにいつも腐らせてしまうんです」

聞くと、丸ごと1個買っては、使いきれないで捨てているそうです。

確かに、スーパーに行くと、丸ごと1個買う方が値段としてはお得ですよね

たとえば、以下のような売り方がされていたりします

丸ごと1200

1/2120

1/470

でも、使いきれないんだったら、多少割高でも、1/2個や1/4個を買って使い切ったほうが、かえってお得かもしれません。あるいは、買っても、調理するのが面倒で、冷蔵庫の中で腐らせてしまうんだったら、千切りしてあるカット野菜を買ったほうがいいかもしれません。

自身も、以前にまとめ買いをして失敗したことがありま

あるとき、業務用の醤油を買いましたなぜかというと、その方がたくさん入っていて安くてお得だったからです。

ところが、そんなに大量に醤油ばかり使うわけもなく、しまいに醤油は酸化して真っ黒になり、味も悪くなってしまいました。一般家庭なら、そんなにドバドバ調味料を使うこともありません。分量の少ないものを買って使い切ったほうが、かえってお得ではないでしょうか

英・大手スーパーTESCO
まとめ売りをやめた理由

イギリスの大手スーパーTESCO(テスコ)食品ロスの実態調査をしたところ、最も無駄になっているのはパック入りのサラダだったそうです。

「1個買うと300円、2個買えば500円」といったまとめ売りも消費者の無駄を生みやすいことがわかりました。そこでTESCOは、バンドルパックと言われる、複数個をセットにする売り方をやめたのです。

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TESCOの出入り口付近に置かれたフードドライブの箱(筆者撮影)

イギリスへ視察に行ったTESCOの出入り口の近くに、食べ物を必要とする人へ寄付するためのフードドライブのボックスが置かれていました。

お客さんは、家で余っている未開封の食品を入れてもいいし、買い物ついでに缶詰やレトルト食品など、日持ちする食品を買って入れてもいいのです。ある程度ボックスの中身がまとまったらフードバンクが回収に来て、食べ物を必要とする人やその組織に渡します。私が視察した際にも、買い物を終えたお客さんがシリアルの箱を入れていました。

ヨーロッパのスーパーマーケットではエシカルな売り方のポスターをよく目にします。たとえばロンドンのWhole Foods Marketでは「3RReduce ReuseRecycle)」と、環境配慮の原則が書かれたポスターが貼ってありました。

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ロンドンのWhole Food Marketに貼ってあった3Rのポスター(小林富雄先生撮影)

私は直接目にしていませんが、イギリスのスーパーには「買い過ぎていませんか?」と、買い過ぎを諭すようなポスターが店内に掲示されているそうです。顧客がたくさん買えば買うほどスーパーとしては儲かるわけですが、お客さんが使いきれずに食品を余らすと、社会にとっては無駄になってしまいます。

つまり、「無駄を助長するような売り方をするスーパーにはなりたくないというわけですこの取り組みは「私たちはエシカルな売り方をする企業です」ということをアピールしているとも言るでしょう

1個買うと1個無料」
これ、本当にお得ですか?

海外では「1個買うと1個無料(Buy One Get One for Free)」といった謳い文句がよくあります。

でも、国によっては、このような売り方をしないようにしているところもあるのです1個しか要らないのに、もう1買えば、その1個は不要になってしまい捨てられるかもしれないからです。

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個買うと1個無料って、本当にお得なんでしょうか。企業が損をしてしまうような・・・企業は赤字を出してまで経営し続けられません。原価が低く、損をしないからできるやり方ではないでしょうか。

食品ロスの分野で世界的に著名なジャーナリスト、トリストラム・スチュアート氏をロンドン郊外で取材したことがあります。彼はスーパーの無駄を追及し、農家でも野菜が無駄に捨てられている事実を報じました。

そして、市民運動で大企業を追い詰め、大企業に食品ロスの情報をきちんと開示させ食品ロスを減らすことを実現した人物でもあります彼の話によると、今でこそ、エシカルな売り方をしているTESCOですが、当初は捨てている食品の量も公開していなかったそうです。

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英ジャーナリストのトリストラム・スチュアート氏と、お互いの著書を手に持って(関係者撮影)

消費者の行動によって食品ロスを改善させていったトリストラムですが、彼は日本について、「日本はお上(かみ)に黙って従うといった風潮で、市民からの突き上げというのが薄いのではないか」と話していました。

「ただ儲かればいいのではなく、エシカルな売り方をする」という姿勢を持つ日本のスーパーはまだ少ないようです。しかし、私たち消費者の買い物の姿勢も変えていく必要があるのではないでしょうか。

具体的には

・「分量が多く安くてお得に見えても、使いきれないなら少ない分量のを買う
・「1個しか要らないのに2個買ったほうがお得』と多く買わない
・「1個買うと1個無料』キャンペーンをする店では買わない

など。

少しずつ、やってみましょう。

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プロフィール
井出留美(いで・るみ)
食品ロス問題ジャーナリスト。近著『食品ロスをなくしたら、1ヶ月5000円の得!』(マガジンハウス)『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬舎新書、4刷)。第二回食生活ジャーナリスト大賞(食文化部門)受賞。Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018受賞
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