2021年5月24日

牛乳の代わりを探せ!(後編) オートミルク3社を比較検証

北海道大学大学院 市村敏伸

エシカルな食について、いま世界ではどのような話題が盛り上がっているのでしょうか。普段は海外のエシカルニュースをブリーフィングしてお届けしている本連載ですが、今回は「牛乳の代わりを探せ!(後編)オートミルク3社を比較検証」と題して、特別編をお届けします。「植物性ミルクはいろいろあるけど、結局どれがいいの?」と気になっている方、必見です!

いま世界で注目のOatly
その実力やいかに

前編では、素材別に9種類のプラントベースミルクを飲み比べ、その模様をお伝えしました。

大豆、米、オーツ麦の穀物系ミルクと、アーモンドやココナッツをはじめとしたナッツ系ミルクを飲み比べ、最も牛乳の代替となるポテンシャルが高いのはオーツ麦を原料としたオートミルクであるという結論となりました。

日本ではオートミールやグラノーラで知られるオーツ麦ですが、昨今、欧米ではオートミルクへの注目が急速に高まっています。その背景としては、大豆をはじめ、他のミルクの原材料に比べて環境負荷への懸念が少ないこともありますが、やはり重要なのは味です。

前編でもお伝えしたように、飲み比べた編集部メンバーの間でも、オートミルクは風味のクセの少なさと、スッキリとした口あたりが好評でした。

多くのメーカーがオートミルクを販売していますが、なかでも最有力とされるのがスウェーデンのメーカー・Oatly(オートリー)です。

Oatlyについては、先月に本連載でも取り上げました。大手コーヒーチェーンのスターバックスコーヒーは、今年3月から全米の店舗でOatlyのオートミルクを使用したラテなどの商品を展開。これが大きな反響を呼び、各地の店舗でオートミルクの在庫切れが相次ぐ事態となるなど、Oatlyへの注目度の高さはお伝えした通りです。

その後もOatlyの躍進にまつわるニュースは絶えず、今月11日には米国でIPO(株式の新規公開)を実施。株式市場を活用しながら資金調達を進め、生産体制の充実を図っていくものと見られます。

ということで、世界的に注目されているOatlyですが、やはり気になるのは「結局、味はどうなの!?」というところ。

しかし、世界的な需給の高まりもあって、残念なことに現在日本ではOatlyの商品は市販されていません。そこで今回、「エシカルはおいしい!!」では業務用のOatlyのオートミルク(ラテなど向けのバリスタエディション)を入手して飲み比べをしました。

前編の飲み比べで最も牛乳の代替ポテンシャルの高かったオートミルクについて、Oatlyも含めた3社の商品を比較し、話題のOatlyの実力を確かめることにします。

各社オートミルクを試飲
方向性の多様さを考える

まず試飲するのは、前編でもご紹介したイタリア・ブリッジ社のオートミルクです。

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ブランド:ブリッジ(イタリア)

購入金額:648円(楽天市場)

原材料:有機オーツ麦、有機食用ひまわり油、有機食用紅花油、食塩

栄養成分(100mlあたり):エネルギー 54kcal、炭水化物 9.6g、たんぱく質 0.7g、脂質 1.9g

認証マーク:EUオーガニック認証、有機JAS、ICEA(イタリア)、AB(フランス)

このブリッジのオートミルク、口あたりはスッキリしていて飲みやすく、口の中で引っかかるような違和感もありません。ただ、口に含んだ時にほんのりとオーツ麦の香りを感じ、味としては独特の甘みがあるのが特徴です。

では、続いて同じくイタリアからIsola BIO(イソラビオ)のオートミルクです。

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ブランド:イソラビオ(イタリア)

購入金額:430円(ビオセボン)

原材料:有機燕麦、有機ひまわり油、食塩

栄養成分(100mlあたり):エネルギー 51kcal、炭水化物 9g、たんぱく質 1g、脂質 1g

認証マーク:EUオーガニック認証

この商品が原材料に挙げている燕麦とは、オーツ麦の和名です。したがって、使用している原材料は先のブリッジのミルクと比べて大きな違いがないと言えるでしょう。

さて、このイソラビオのオートミルクですが、一口含むと「いかにも麦のミルク」というような粉っぽさを感じるのが特徴。スッキリとした飲み口のブリッジの商品とは対照的な印象です。

また、風味も麦の香りが強く、ブリッジの商品ほど甘みはないものの、より素朴な麦の味を感じます。

それでは、いよいよOatlyのオートミルクを試飲してみましょう。

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ブランド:Oatly(スウェーデン)

参考価格810

原材料:オーツ麦、菜種油、塩、リン酸カリウム、炭酸カルシウム、ビタミンB2、ビタミンB12、ビタミンD2

栄養成分(100mlあたり):エネルギー 59kcal、炭水化物 6.6g、たんぱく質 1g、脂質 3g

認証マーク:なし

今回、編集部で入手したのは業務用に販売されているバリスタエディションという商品。ミルクの色はベージュに近く、イソラビオの商品と似ています。

肝心なのは味です。話題のOatlyの実力はいかほどか、ドキドキしながら編集部メンバーで飲んでみます。

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結論から言えば、「これは牛乳っぽい!」というのが編集部の率直な感想です。

スッキリとした口あたりはもちろんのこと、脂肪分による牛乳特有のまろやかな"ミルキーさ"が再現されていることに驚かされます。

もちろん、微かに麦の風味はありますが、ブリッジ、イソラビオに比べれば軽微なものです。さらに、試しにミルクを温めてコーヒーに加えラテにしてみると、その麦の香りも消え、まろやかさだけが残り、牛乳の再現度がより一層高くなりました。

この違いはどこから来るのか。もちろん、オーツ麦の処理を含めた製法にも特徴はあると推察されますが、原材料に注目しても他社との違いが際立っています。

ブリッジやイソラビオは添加物を使用しないシンプルな原材料であるのに対して、Oatlyはカリウムやカルシウムなどの添加物が多いのが特徴的。また、他のプラントベースミルクでは主流のひまわり油を使わず、菜種油を使用していることにも注目です。

もう一点、Oatlyと他社との違いと言えるのが、オーガニックなどの認証マークが付されていないことでしょう。ブリッジやイソラビオはオーガニック認証を表記し、原材料もシンプルな構成です。これはオーツ麦本来の味わいをなるべく自然な形でミルクに活かしたいという姿勢の表れかもしれません。

一方、Oatlyは認証表記がなく原材料にも添加物が多いことから、その分、牛乳の味わいに近づけることにウェイトを置いていると評価できそうです。

したがって、どのオートミルクが求められるかは、それぞれの顧客のニーズによって変わってくるでしょう。ただ、今回の「牛乳に最も近いのはどれだ?」という観点では、Oatlyのミルクに軍配が上がる結果となりました。

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多様なプラントベースミルク
選ぶために重要なことは

前後編にわたってお送りしてきた、プラントベースミルクの検証企画。「最も牛乳の代わりとなる(=牛乳の風味に近い)のはどれ?」というお題について、編集部が出した答えは「Oatlyのオートミルク」です。

ただ、前編でもお伝えしたように、オーツ麦以外の素材を使ったミルクにもそれぞれ大きな特徴がありました。特に、カシューナッツやヘーゼルナッツなどのナッツ系ミルクは料理向けとしての可能性は大きいように感じます。

さらに、同じオーツ麦を使ったミルクでも、メーカーによって商品のタイプは様々です。添加物などは使いながらも牛乳の風味の再現度を高めているOatlyのような方向性もあれば、オーツ麦本来の味わいを活かしたブリッジやイソラビオのような商品もあります。

そのため、「どのミルクがベストか」という問いへの答えは、「どのようなミルクを求めているのか」によって変わってしまいます。牛乳の味わいに近いものを試してみるもよし、素材の個性を感じるものを試すもよし。読者の皆さんそれぞれの好みにあった、「ミルク」の新しいあり方を体験してみてはいかがでしょうか?

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プロフィール
市村敏伸(いちむら・としのぶ)
1997年生まれ、一橋大学法学部卒業。大学在学中にライター活動を開始し、現在は北海道大学大学院農学院に在籍中。専門は農業政策の形成過程に関する研究。
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