2021年5月16日

牛乳の代わりを探せ!(前編)プラントベースミルク11種類を徹底検証

北海道大学大学院 市村敏伸

エシカルな食について、いま世界ではどのような話題が盛り上がっているのでしょうか。普段は海外のエシカルニュースをブリーフィングしてお届けしている本連載ですが、今回は「牛乳の代わりを探せ!(前編) プラントベースミルク11種類を徹底検証」と題して、特別編をお届けします。「植物性ミルクはいろいろあるけど、結局どれがいいの?」と気になっている方、必見です!

牛乳と肩を並べる存在に?
プラントベースミルクの可能性は

「プラントベースミルク」という言葉、皆さんはご存知でしょうか。

本連載では以前から何度か取り上げていますが、プラントベースミルクとは植物性の原料から作られた牛乳の代替品のこと。

牛や豚などの家畜を飼育する畜産業は、その関連産業も含めると人間による温室効果ガス排出の約15%を占めているとも言われています。昨今、畜産業の環境負荷の問題へ関心が高まっている欧米では、牛乳を代替する存在(代替乳)としてのプラントベースミルクに注目が集まっているのです。

Plant Based Foods Associationの調査によると、米国では飲用乳市場全体に占めるプラントベースミルクの割合が2019年には13.9%、さらに2020年は15.2%まで伸びたことが明らかになりました。このままいけば、プラントベースミルクが牛乳と肩を並べる存在になる日が来るかもしれません。

ところで、ひとくちに「プラントベースミルク」と言っても、その内容は様々です。

現在のところ、プラントベースミルクの原料は実に多様で、日本人にも馴染み深い大豆に、お米。さらにはオーツ麦などの麦類や、アーモンドやココナッツなどのナッツ系のミルクもあり、ここにメーカーごとの違いも出てくると、「結局どれが一番牛乳に代わりになるの?」という疑問が浮かんできます。

そこで、「エシカルはおいしい!!」編集部では、そんな疑問に答えるべく、計11種類のプラントベースミルクを準備して飲み比べを実施。現状、日本で手に入る商品で、どれが最も牛乳の代替品としての可能性があるのか?徹底検証していきます。

素材ごとに9種類を検証
真の代替乳はどれか

まずは、今回編集部で準備したプラントベースミルク11種類をご紹介しましょう。

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※()内はメーカー

  1. ソイミルク(ブリッジ)
  2. ライスミルク(ブリッジ)
  3. オートミルク(ブリッジ)
  4. 同上(isolaBIO)
  5. 同上(Oatly)
  6. アーモンドミルク(ブリッジ)
  7. ココナッツミルク(Ecomil)
  8. カシューナッツミルク(Ecomil)
  9. ヘーゼルナッツミルク(EcoMil)
  10. ウォルナッツミルク(137degrees)
  11. ピスタチオミルク(137degrees)

今回取り揃えた商品を原料別に見ると、上の1から5までは穀物系、6から11まではナッツ系と大きく分類することができます。まずは、日本人にも馴染み深い大豆を含む、穀物系ミルクから試飲していきましょう。

大豆、米、オート
穀物系ミルクの実力は?

まずは、イタリア・ブリッジ社のソイミルクです。

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ブランド:ブリッジ(イタリア)

購入金額:561円(楽天市場)

原材料:有機大豆、食塩

栄養成分(100mlあたり):エネルギー 46kcal、炭水化物 1.5g、たんぱく質 3.6g、脂質 2.8g

認証マーク:EUオーガニック認証、有機JAS、ICEA(イタリア)、AB(フランス)

日本人にも馴染み深い豆乳ですが、日本の豆乳とは異なり、枝豆のような独特の風味があり、濃厚さはないものの口あたりはスッキリとしています。しかし、牛乳の代替としては風味のクセが気になるところです。

続いては、同じくブリッジ社からライスミルクです。

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ブランド:ブリッジ(イタリア)

購入金額:583円(楽天市場)

原材料:有機米、有機食用ひまわり油、有機食用紅花油、食塩

栄養成分(100mlあたり):エネルギー 66kcal、炭水化物 1.3g、たんぱく質 0.5g、脂質 1.4g

認証マーク:EUオーガニック認証、有機JAS、ICEA(イタリア)、AB(フランス)

大豆と同じく、日本人に馴染み深いお米を使用したミルクです。編集部メンバーからは「甘酒みたい」という声も上がり、独特の甘みがあり、口あたりは滑らかで飲みやすい印象です。ソイミルクと違い、主原料の米のほか紅花油が入っていることで、コクが増しているのかもしれません。

甘酒のようにストレートで飲むような使い方はできるかもしれませんが、牛乳のようにコーヒーに合わせる飲み方をした場合は、風味に違和感が感じるかもしれません。

では続いて、昨今欧米で人気上昇中のオート麦を使ったオートミルクです。なお、オートミルクは3社分を準備しましたが、ひとまずは大豆、米と同じくブリッジ社の商品を試飲します。

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ブランド:ブリッジ(イタリア)

購入金額:648円(楽天市場)

原材料:有機オーツ麦、有機食用ひまわり油、有機食用紅花油、食塩

栄養成分(100mlあたり):エネルギー 54kcal、炭水化物 9.6g、たんぱく質 0.7g、脂質 1.9g

認証マーク:EUオーガニック認証、有機JAS、ICEA(イタリア)、AB(フランス)

このオートミルク、色を見ると、大豆や米に比べて若干黄色がかっているようにも感じます。口に含むとほんのりと甘みはありますが、口あたりがさっぱりとしていて飲みやすいという声が編集部メンバーからも上がりました。

微かに麦のえぐみも感じられますが、これまでの大豆と米に比べて、香りや味のクセは少なく、「飲みやすさ」という意味では優れています。欧米で支持を集めているのも納得です。

今のところ、牛乳の代替ポテンシャルでは優秀なオートミルク。今回、オートミルクについては、最近話題のOatly社の商品も含め3社分を準備したため、オートミルクについては本記事の後編でメーカーごとの検証を行ない、より詳しく牛乳の代替ポテンシャルを探っていくことにします。乞うご期待です。

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編集部メンバーで試飲中

日本人には馴染みの薄い
ナッツ系ミルクの数々

穀物系ミルクの試飲が一通り終わったところで、続いてはナッツ系ミルク。まずはこの系統ではよく知られているアーモンドミルクから試飲してみます。

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ブランド:ブリッジ(イタリア)
購入金額:756円(楽天市場)
原材料:有機アーモンド
栄養成分(100mlあたり):エネルギー 38kcal、炭水化物 0.8g、たんぱく質 1.5g、脂質 3.2g
認証マーク:EUオーガニック認証、有機JAS、ICEA(イタリア)、AB(フランス)

これまでのライスミルク、オートミルクは同じブリッジ社のものでも原材料に油分が添加されていたのに対して、アーモンドミルクは原材料がアーモンドのみ。ですが、脂質は3.2g/100mlとリッチな味わいです。ここに油脂を多く含むナッツ系ミルクの特徴があると言えそうです。

さて、肝心の味はというと、口あたりは比較的なめらか。風味はアーモンド特有の香ばしい風味が特徴的です。飲みやすい点は評価できますが、「牛乳の代わりとなるか」を考えると、アーモンドの香りの強さがネガティブな要因となるかもしれません。

続いては、アーモンドと同じく比較的馴染みのあるココナッツミルクです。

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ブランド:Ecomil(スペイン)
購入金額:1,143円(Amazon)
原材料:有機ココナッツミルク、有機タピオカスターチ、海塩、ココナッツ香料
栄養成分(100mlあたり):エネルギー 34kcal、炭水化物 2.0g、たんぱく質 0.2g、脂質 2.7g
認証マーク:EUオーガニック認証、有機JAS

一口飲んでみると、エスニック料理などを通じて日本人にも馴染みのある「ココナッツミルクの味」が口に広がります。ココナッツの甘みがあり、なめらかな口あたりですが、アーモンド同様にココナッツの香りが強く、牛乳の代替にはならなさそうです。

ただ、アーモンドとココナッツはどちらも飲みやすい印象で、牛乳とは別の用途の飲み物としては可能性があるようにも感じました。

続いて、日本人に馴染みのないナッツ系ミルクも試していきます。

■カシューナッツミルク

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ブランド:Ecomil(スペイン)
購入金額:980円(ビオセボン)
原材料:有機カシューナッツ、海塩
栄養成分(100mlあたり):エネルギー 37kcal、炭水化物 1.6g、たんぱく質 1.0g、脂質 2.8g
認証マーク:EUオーガニック認証、有機JAS

■ヘーゼルナッツミルク

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ブランド:Ecomil(スペイン)
購入金額:1,143円(Amazon)
原材料:有機ヘーゼルナッツ、有機タピオカスターチ、有機キャロブビーン粉、海塩、ヘーゼルナッツ香料
栄養成分(100mlあたり):エネルギー 32kcal、炭水化物 1.3g、たんぱく質 0.6g、脂質 2.6g
認証マーク:EUオーガニック認証、有機JAS

■ウォルナッツミルク

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ブランド:137degrees(タイ)
購入金額:1,121円(楽天市場)
原材料:くるみミルク、ひまわり種、ココナッツ花蜜
栄養成分(100mlあたり):エネルギー 59kcal、炭水化物 3.7g、たんぱく質 0.8g、脂質 4.7g
認証マーク:なし

■ピスタチオミルク

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ブランド:137degrees(タイ)
購入金額:1,121円(楽天市場)
原材料:ピスタチオミルク、カシューナッツミルク、ひまわり種、ココナッツ花蜜
栄養成分(100mlあたり):エネルギー 56kcal、炭水化物 4.0g、たんぱく質 0.9g、脂質 4.2g
認証マーク:なし

まずはそれぞれの色を比較していくと、タイのブランド・137degreesのミルクは色が濃いのが特徴です。このブランドでは、原材料に花蜜を使っており、このことが色にも関係しているのかもしれません。

続いて味ですが、一言でいえば、どれもナッツの濃厚な風味が特徴的。特に、カシューナッツミルクは、生のカシューナッツの強い香りが鼻に抜け、試飲した編集部メンバーからは「体験したことのない味」という感想も上がりました。

また、137degreesのミルクは花蜜を使うことによって独特の甘みが加わっており、これはタイの食嗜好が影響しているとも考えられます。

ここで取り上げた4つのミルクは総じて、ナッツ本来の甘さや香りがアーモンドやココナッツに比べて格段に強く、飲み物としては好みが分かれそうです。そのため、飲用というより、お菓子作りなどの料理に適しているかもしれません。

結論!牛乳の代わりに使える
プラントベースミルクはどれだ!

ここまで9種類の素材を使ったプラントベースミルクを試飲してきました。それでは、ここでひとまずの総括です。

穀物系ミルクとナッツ系ミルクとでは、基本的に大きな違いがありました。

大豆や米は、ややクセがありオートに比べると劣るものの、ナッツ系に比べれば「飲みやすさ」の観点では優れていました。一方のナッツ系ミルクは、それぞれのナッツ固有の風味がどうしても日本人の口には引っかかる印象です。

ナッツ系ミルクでもアーモンドとココナッツは、牛乳の代替にはならないものの、"飲み物"としてはアリだなという印象を持ちました。しかし、その他のナッツ系ミルクは飲み物というより、料理に適している可能性の方が高いように感じました。

ということで、牛乳の代替という観点では、ナッツ系ミルクよりも穀物系ミルク。さらに、穀物系ミルクのなかでも、風味のクセが少ないオートミルクが最も近いのではという結論となりました。

では、そのオートを使ったミルク、実はメーカーごとに大きく味わいが違います。後編では3社のオートミルクを比較検証していきます。→ 後編へ

2021年513日執筆

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プロフィール
市村敏伸(いちむら・としのぶ)
1997年生まれ、一橋大学法学部卒業。大学在学中にライター活動を開始し、現在は北海道大学大学院農学院に在籍中。専門は農業政策の形成過程に関する研究。
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