2022年4月22日

お菓子づくりからエシカルな買い物を考える 前編「乳製品と砂糖をエシカルに買うために」

株式会社グッドテーブルズ 井上真貴

食べることが楽しい「今日」をつくり、食べたいものがあたりまえに食べられる「明日」をむかえるために。日々の生活の中でできるちょっとした工夫を紹介します。

エシカルな食に関心を持ってから、普段の自分の買い物がエシカルなのか、考えるようになりました。

そして、普段のごはんだけでなく、おやつにもこだわりたいと思うようになりました。しかし、こだわりのお菓子を毎日買う余裕はありません。なので、なるべくスーパーで買えるもので済ませたいところ。そこで、「普通のスーパーでもエシカルなお菓子の材料は買えるの?」ということが気になりました。

下の食材は、プリンとガトーショコラの一般的な材料です。

1.プリン:卵、牛乳、砂糖
2.ガトーショコラ:卵、牛乳、砂糖、チョコレート、バター

普通のスーパーで買える食材の多くは大手食品メーカーの商品ですから、ここからは食材ごとに大手メーカーのエシカル度合いを確認していきましょう。

持続可能な調達に向けた
大手乳製品メーカーの取り組み

まず、牛乳とバターについては、明治、雪印メグミルク、森永乳業の大手3社を考えます。

牛乳とバターは生乳が主な原材料です。そこで、牛の飼育環境への配慮(アニマル・ウェルフェア)についての方針を、まずはチェックしてみましょう。

アニマル・ウェルフェアについては、明治と雪印メグミルクがそれぞれ方針を出しています。

明治は「明治グループファームアニマルウェルフェアポリシー」を2021年9月に制定し、具体的な取り組みを明記しました。このなかで強調されているのが、アニマル・ウェルフェアの「5つの自由」の推進です。

「5つの自由」とは、世界の動物衛生の向上を目的とする国際組織・国際獣疫事務局が示した基本指針で、以下の5つを動物に与えなければならないとしています。

①飢え、渇きおよび栄養不良からの自由

②恐怖および苦悩からの自由

③物理的、熱の不快からの自由

④苦痛、傷害および疾病からの自由

⑤通常の行動様式を発現する自由

一方、雪印メグミルクは、「アニマルウェルフェアの考え方に対応した乳用牛の飼養管理指針」に基づいた取り組みを行うとしています。

「アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針」とは、アニマルウェルフェアに関する日本独自の指針です。国際獣疫事務局が示した指針も踏まえ、公益社団法人畜産技術協会がとりまとめています。「アニマルウェルフェアの考え方に対応した乳用牛の飼養管理指針」はその一つで、乳用牛に対する指針です。

また、牛乳の紙パッケージについても、各社は調達方針を示しています。

日本の牛乳パッケージの多くは、森林認証と呼ばれるFSC認証やPEFC認証を受けた紙原材料が使用されています。この認証は、木材が持続可能な方法で生産されたことを保証しており、森林の管理方法はもちろん、加工の過程で認証外の木材が混ざらないかどうか等も評価されます。

なお、FSC認証は国際基準に基づく制度である一方、PEFC認証は各国独自の森林認証をベースとした制度です。そのため、FSC認証はPEFC認証に比べて、統一の基準をもつ利点があります。

明治は、「明治おいしい牛乳900ml」でFSC認証紙を使用しています。また、2020年度までに国内で生産する製品の容器包装に使用する紙のほぼ100%を、FSCやPEFCなどの認証を受けた紙原材料に転換しました。

雪印メグミルクは、PEFCなどの森林認証紙を、「雪印メグミルク牛乳」「すっきりCa鉄」「毎日骨太」などの商品包装に採用しています。

森永乳業は、独自の「エコパッケージガイド」を制定し、3R(リデュース・リユース・リサイクル)などに配慮した容器包装の開発・改良を進めています。一部のアイスクリーム商品にはFSC認証紙を使用していますが、牛乳とバターの商品包装に関する情報は公開されていません。

「エシカルな砂糖」って
いったい何?

次は砂糖についてです。砂糖については、大手の日新製糖と日本甜菜製糖の状況を調べてみます。

調べてみると、日新製糖が小型収穫機の開発による種子島のサトウキビ農家の支援を行うなど、エシカルな取り組みも一応出てくるのですが、具体的な数値実績や目標、認証の取得状況などの情報は公開されていません。

確かに、食のエシカルについての取り組みというと、アニマルウェルフェアや、カカオ豆のフェアトレードなどが有名で「エシカルな砂糖の調達」というのは、聞きなじみがありません。

ですが、実は砂糖にもフェアトレード認証は存在しています。

まずは、フェアトレードの仕組みを簡単に確認しましょう。フェアトレードは生産者に支払われる最低価格が保証されます。そして、もう1つの特徴が、生産者組合や地域のために支払われる「プレミアム」と呼ばれる上乗せ価格の存在です。このプレミアムが上乗せされた価格を消費者が支払うことにより、生産者たちの地域における教育支援などが行われています。

しかし、砂糖のフェアトレードの場合、他のものとは異なり、最低価格の設定がないという特徴があります。それでも、「プレミアム」の制度は存在しており、砂糖1tあたり60ドル(認証された有機砂糖の場合は1tあたり80ドル)のプレミアム価格が支払われます。ですから、砂糖の場合でも、フェアトレード付きのものが生産者を支援する「エシカルな砂糖」ということができそうです。

砂糖については、現状、大手メーカーから公表されている情報は多くありません。ですが、意識的に「フェアトレードマークがついているか」や「有機JAS認証マークがあるか」などをチェックすることで、エシカルな砂糖を買い求めることができます。

ここまで乳製品と砂糖について、確認してきました。後編では、お菓子作りに欠かせない、チョコレートや油に関するエシカルを考えます!

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プロフィール
井上真貴(いのうえ・まき)
慶應義塾大学在学中。おいしいもの食べることが生きがいで、持続可能な食料システムの実現に関心を持っている。慶応大の学生と株式会社SEE THE SUNとのプロジェクトにも取り組んでいる。
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