国内外のエシカルな食に関する話題は取り上げられることが多いですが、では、実際に我々・消費者は生活のなかでどのようなポイントを意識すれば"エシカル"になるのでしょうか?そんな常の食生活のなかでも意識できるエシカルについて、食品ロスジャーナリスト・井出留美さんに教えて頂きます。今回のテーマは「魚の食品ロス」です。
まずは知ることから
未利用魚の問題
今年3月、「CCB(クリエイティブ・クッキング・バトル)in熱海」というイベントで審査員を務めました。CCBとは、決められた時間内でいかに無駄なくおいしく料理ができるかを競うイベントで、今回は「熱海でとれる多様な未利用魚を、無駄なく美味しくいただこう!」をテーマに、レシピ動画を募集しました。
私自身、この審査員を務めて初めて知りましたが、日本で獲れる魚種のうち、およそ3〜4割が熱海で獲ることができるそうです。その数、なんと約1500種類!
熱海では年間を通して、アジやサバ、イワシ、カツオなど、多種多様な魚が獲れます。一方、獲る魚を選定できないので、規格外や獲れた量が少ないなどの理由で、市場価格がつかない、もしくは市場価格が低く買い手がつかない「未利用魚」が発生してしまいます。
私は、食品ロスの講演や啓発活動を通して、この「未利用魚」問題への取り組みが各所で進んでいることを知りました。
有機農産物などの宅配を手がける「大地を守る会」では、「もったいナイシリーズ」と銘打って、野菜や果物も含めた規格外の一次産品が販売されています。
また、その日の市場のせりで売れ残った魚を買い取り、おいしく料理して提供する飲食店もあります。それが、居酒屋「築地もったいないプロジェクト 魚治(うおはる)」の取り組みです。
魚治では、朝のせりで何が残り、昼に何が届くかわからないので、実際に魚が届いてからその日のメニューが決まります。こちらではメニューを手書きで書いているので、開店当初は毎日変わるメニューを整理するだけでも大変だったそうです。
有楽町駅から徒歩圏内という立地と、もったいない魚を捨てずに活かすというコンセプトが好評のこの魚治、主にビジネスパーソン向けのお店ですが、ぜひ読者の皆様にも足を運んでみて頂ければと思います。
流通過程で捨てられる魚
魚の「アラ」も
底引網などの漁法では対象とする魚以外が獲れてしまいます。そのため、未利用魚は港で発生するが多いですが、流通の過程で発生する場合もあります。
例えば、魚同士のうろこが擦れて、はがれてしまった場合。そうなると、もう売り物になりません。カニでも、輸送途中に脚が一本でも取れてしまえば、本来なら一万円以上するカニの値付けは劇的に安くなってしまいます。
未利用魚になる理由は他にもあります。「貝のつぶの大きさが揃っていない」、「旬ではない」、「ある地域でのみ流通しており他の地域では食べられていない(北海道でよく獲れる八角など)」、「傷がついている」、「サイズが普通よりも大きすぎる(通常1kgぐらいのヒラメが、5〜7kgのものだと、料理人がさばききれない)」など、様々な理由で未利用魚は発生しています。
また、完全な未利用魚というわけではありませんが、魚の「アラ」も以前と比べて捨てられることが多くなりました。この背景にも、流通の事情が関係しています。
魚のアラの活用に取り組んでいる人気ラーメン店・麺屋武蔵の矢都木二郎社長は、流通の過程で魚のアラの廃棄が発生しやすくなる理由をこう説明します。
「魚は切り身にすることで物流コストが下ります。なので、余分なアラは捨ててしまうんです。重量の観点からもデメリットのある、魚丸ごと一匹での流通というのは減ってしまいました。おそらく、日本で発生しているアラ全体のうち、きちんと使われているのは1%以下だと思います」
わたしたち消費者は、当たり前のように、切り身を買って家で食べたり、寿司屋で寿司を食べたりしています。でも、その裏側では、実はたくさんの未利用魚や魚の部位が捨てられています。ここまで挙げたように、そうした未利用魚をいかす取り組みが少しずつ増えてきています。できる限り、未利用魚を食べようと心がけていきましょう。
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