国内外のエシカルな食に関する話題は取り上げられることが多いですが、では、実際に我々・消費者は生活のなかでどのようなポイントを意識すれば"エシカル"になるのでしょうか?そんな常の食生活のなかでも意識できるエシカルについて、食品ロスジャーナリスト・井出留美さんに教えて頂きます。今回のテーマは「ミネラルウォーターの賞味期限は何が基準?」です。
ペットボトルに印字された日付
その意味をご存知ですか?
先日、テレビ番組の収録で、賞味期限切れなどの食料品を販売する店へ行きました。店頭には、東京オリンピック・パラリンピックで余ってしまった大量のケータリング用食品や、コロナ禍の渡航規制で余ってしまった外国人観光客向けのお土産用菓子、冠婚葬祭の行事がなくなったために余ってしまった酒類など、さまざまな種類の食料品が山のように積んでありました。
その中に、2リットルサイズのペットボトルに入ったミネラルウォーターがありました。
上の写真から分かるように、このボトルは少し凹んでしまっています。なぜ、凹んでしまうのでしょう?それは、長期間保存している間に、ペットボトルの容器を介して水が蒸発してしまうからです。
日本では、計量法という法律があり、パッケージなどに明記してある容量を満たさないものは販売することができません。つまり、「2リットル」と書いてあるのに、2リットル入っていないものは「計量法違反」ということになるのです。
そこで、表示してある容量が保証できる日付(あるいは年月)が、ペットボトルの本体やキャップ部分には書いてあります。
そう、ペットボトルのミネラルウォーターに書いてある賞味期限は、実は厳密には賞味期限(おいしさの目安)ではなく、容量を保証できる期限なのです。だから、賞味期限の日付を過ぎたからといって、すぐに捨てる必要はありません。
その証拠に、もしミネラルウォーターが、ペットボトル容器ではなく、ガラス容器に入っていれば、賞味期限表示は省略できる決まりになっています。ガラスであれば水が蒸発しないからです。
中の水は、加熱やろ過などの工程を経て殺菌されていますので、外から危害が加わらない限り、賞味期限が少し過ぎた程度なら飲用可能な場合がほとんどです。
ミネラルウォーターの賞味期限
意味を理解することの大切さ
こうしたペットボトルのお水をめぐる誤解は特に災害時に問題となりやすいです。
2016年4月に発生した熊本県での地震のあと、熊本市には全国からペットボトル入りのミネラルウォーターが寄付されました。しかし、すべてを使いきれなかったので、地震から3年が経った後、賞味期限が過ぎてしまったものが130トンも残ってしまいました。
熊本日日新聞の報道によると、困った熊本市は、この余った水を花壇の水やりや手足を洗うのに使ったそうです。このように期限切れの水を生活用水として無駄なく使っていただくことはもちろんいいのですが、十分に飲用できるものであれば、生活困窮者の方でライフラインが止まってしまった方(電気・ガス・水道などの料金が払えずにそれらが使えなくなってしまった方)に使っていただくことも可能です。
2019年に千葉県を台風16号が襲った際にも、ペットボトルに印字された水の賞味期限が問題になりました。
千葉県富津市では、市で備蓄していたペットボトルのミネラルウォーターを被災した市民の方々に配布。ところが、そのミネラルウォーターの賞味期限が切れていたということで市民から苦情があり、市が謝罪する事態となりました。
でも、なぜペットボトルのミネラルウォーターに日付が表示されているか、そして印字されている日付が何を意味しているのかを知っていれば、市はそのことを市民の方に説明し、問題のないものであれば使っていただくことができたはずです。
家庭でも、備蓄として保管しておいたペットボトル入りのミネラルウォーターの賞味期限が少し過ぎていたとしても、すぐに捨てないようにしましょう。また、中身の水を使った後も、ペットボトルはお米などを保管しておくのに使うことができて便利です。
私は2リットルのペットボトルの空ボトルに、玄米や白米などのお米を入れて、野菜室などで保管しています。市販のお米ではなく、農家で収穫されたお米などは放置しておくと、夏場は虫がたかる場合もあります。でも、このように容器に移し替えて保存しておけば、虫がたかる心配はありません。
SDGsの6番目のゴールでは「安全な水とトイレを世界中に」が目標とされています。WHOによると「1km以内に1人あたり1日20リットルの水を確保できる場所がある」という条件を満たすことができない人は世界に9億人以上いらっしゃいます。
水がなければ、わたしたちは命をつなぐことができません。十分に飲むことができる水であれば、最後まで大切に飲食に使い、わたしたちの命のために使いましょう。
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