2021年8月20日

「コンビニとエシカル」その共存を考えよう

食品ロス問題ジャーナリスト 井出留美

国内外のエシカルな食に関する話題は取り上げられることが多いですが、では、実際に我々・消費者は生活のなかでどのようなポイントを意識すれば"エシカル"になるのでしょうか?そんな常の食生活のなかでも意識できるエシカルについて、食品ロスジャーナリスト・井出留美さんに教えて頂きます。今回のテーマは「『コンビニとエシカル』その共存を考えよう」です。

コンビニで捨てられる食べ物
その総額、ご存知ですか?

「コンビニ」と言われて、皆さんはどのような言葉をイメージするでしょうか?

「便利」「24時間営業」「開いててよかった」などが多いのではないでしょうかただ、私はどうしても「食品ロス」や「廃棄」を思い浮かべてしまいます。

SNSで恵方巻やクリスマスケーキが大量に捨てられる写真や映像が載ったことあり、なんとなく「コンビニの食べ物って捨てられている、かも」と思っている人は多いでしょう。でも具体的にコンビニがどれだけの食料を捨てているか、答えられる人は少ないのではないでしょうか。

2020年9公正取引委員会が発表した内容によれば、1年間にコンビニ1店舗あたり廃棄されている食料は、平均で468万円分にも上ります

国税庁の統計によると、雇用されている民間給与所得者の平均年収は436万円ですから、1軒のコンビニだけで会社員の平均年収を上回る額の食品ロスが発生しているというわけです

会社員の平均年収を上回る額の食料を捨てていながら、それでコンビニ経営が成り立っていることを不思議に思った方もいるかもしれません。

詳しい説明は省略しますが、大手コンビニは「コンビニ会計」という特殊な会計の仕組みを使っており、本部へのロイヤルティの源泉となる利益を計算する際には売れ残って廃棄された商品の仕入れ原価は考慮されません。

言い換えると、本部は売上高から商品の仕入れ原価を差し引いた利益からロイヤルティを徴収するわけですが、たとえ商品が売れ残っても、売れ残り分の仕入れ原価は売上高から差し引かれないので、本部からすると廃棄したところで利益はほとんど変わらないのです。

つまりその売れ残り分の仕入れコストは加盟店が一方的に負担することになります。売れ残りなどのコストは80%以上加盟店が負担していると言われ本部の負担は20%以下。商品を捨てても本部の懐は痛まないばかりか、むしろ、見切り販売するより廃棄したほうが本部の実入りが多いという不思議な仕組みなのです。

かつて取材したあるコンビニ加盟店のオーナーは、年商2億円にもかかわらず、経費などを差し引くと利益がないと嘆いていました。家と店との往復に使う車のガソリン代すら経費として落とすことが許されず、自腹で払っているそうです。日本のコンビニの多くはこうした加盟店の負担の上に成り立っているのです。

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コンビニで消費期限の手前にある販売期限で捨てられる大量の食品(コンビニオーナー提供、筆者が白黒加工)

コンビニの活用方法
エシカルに考えよう

ここまでコンビニで起きている食品廃棄についてお話しましたが、そうは言ってもいまやコンビニは我々の生活に不可欠なインフラであることは間違いありません

私は毎日コンビニに行くことはありませんが、出張や旅行調理ができない環境にいるとき、あるいはその土地でないと買うことができない新聞を手に入れたいとき、その土地ならではの食べ物を買うときには重宝しています。

また、北海道を基盤とするコンビニ・セイコーマートでは、2018年の北海道地震の際、カツ丼にする予定だったご飯を、急遽、塩むすびにして、多くの被災者にご飯を提供しました。この臨機応変対応、多くの人の共感を得ましたが、これも多くの人にとって身近な存在であるコンビニだからこそ出来たことでしょう。

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2018年北海道地震の際、セイコーマートが提供した塩むすび(被災者提供)

ただ、食料廃棄の問題など、コンビニが解決すべきエシカルな問題はたくさんあります。そこで、私たち消費者が実践できるエシカルなコンビニの活用法としてご提案したいのが、「てまえどり」です。

最近、多くのコンビニで、期限の迫った商品から順番に手前から取ることを客に促す「てまえどり」のPOPが掲示されるようになりました。「手前から取る」。シンプルですが、も立派なエシカル消費です。

あるコンビニのオーナーさんは、「パンは3鮮度を置かないようにしている」と話していました。つまり、消費期限が3種類になるように置くと、多くのお客さんが奥に手をのばし、一番新しい日付のものを引っ張り出してしまうから、だそうです。おにぎりでも同じことが起こっています。

自分のことだけを考えればそれでいいかもしれませんが、期限が迫ったものが売れ残ってしまえば店が困ります。そう、廃棄する食品のコスト80%以上はそれぞれの加盟店が負担しているのでしたね。

そして、店が廃棄コストを負担するだけでなく、多くの自治体では、これら事業系一般廃棄物は家庭ごみと一緒に税金を使って焼却処分されます。つまり、私たちが市区町村に納めた税金が、食べ物を燃やされるのに使われるということです。なんでもかんでも奥から取って買うのは自分の首をしめる行為でもあるのです。

コンビニは何かと便利な存在です。しかし、の「便利」の裏側にある誰かの我慢や犠牲を知ることも大切ですその現状を知った上で、意識を変え、行動を変え、少しでも改革を進めていくことが必要ではないでしょうか。

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プロフィール
井出留美(いで・るみ)
食品ロス問題ジャーナリスト。近著『食品ロスをなくしたら、1ヶ月5000円の得!』(マガジンハウス)『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬舎新書、4刷)。第二回食生活ジャーナリスト大賞(食文化部門)受賞。Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018受賞
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