2021年7月20日

エシカルに家庭ごみを処理するには?

食品ロス問題ジャーナリスト 井出留美

国内外のエシカルな食に関する話題は取り上げられることが多いですが、では、実際に我々・消費者は生活のなかでどのようなポイントを意識すれば"エシカル"になるのでしょうか?そんな常の食生活のなかでも意識できるエシカルについて、食品ロスジャーナリスト・井出留美さんに教えて頂きます。今回のテーマは「エシカルに家庭ごみを処理するには?」です。

分ければ資源
捨てればごみ

先日、テレビで「生ごみの臭い問題解決」特集が放映されていました。気温が上がってくると、生ごみの臭いも気になりますね。

でも、そのテーマを見て残念に思ったのは、「もともとごみじゃないものも、ごみいう前提にしちゃってるんだな」ということ。番組では重曹スプレーをかけたりコーヒーを乾かしたものをかけたりして、臭いを防ぐ方法が紹介されていました。

でも、臭いは元から断たなきゃだめ!ごみを「ごみ」にしないことが肝心です。

私が廃棄物の対策審議会委員を務めている埼玉県川口市の環境センターには、「分ければ資源 捨てればごみ」という標語が掲げられています。

日本では、生ごみ「燃やすごみ」と一緒に燃やされることがほとんどです。でも海外では生ごみを分別回収して、バイオガスや堆肥、家畜のエサにしている事例が見られます。つまり、資源として活用することでごみにしていないのです。

では、生ごみごみ」にせず臭い問題を解決するために、どんな方法があるでしょうか。主なものを3つ挙げてみましょう。

「生ごみ予備軍」を減らす!

生ごみの臭いの問題を解決する一番シンプルな方法、それはズバリ

そもそも生ごみを出さない

ことです。ゼロは無理でも、できる限り少なくすることはできます。

例えば、なすのへたを切るとき、まな板の上に置いて、垂直に包丁を入れると食べられる部分まで切れてしまいますが、へたに沿わせるように、斜めに包丁を入れると、切りすぎることはありません。これは料理研究家のキムラカズヒロさんに教えて頂きました。

スクリーンショット 2021-07-20 11.07.54.jpg

ほかにも、野菜の皮はよく洗ってまるごと食べるとか、ピーマンを種ごと調理するなど、「生ごみ予備軍」を減らせば、生ごみの臭いに悩まされる頻度は減ってきます。

重量の80%を占める
水分を徹底的に減らす!

2つ目の工夫、生ごみの水分を徹底的に切ることです。

生ごみの重さのうち、80%以上は水分が占めています。つまり、水分を減らせば、生ごみは圧倒的に減るのです。しかも、水分が多いと菌が分解して腐敗し、臭いの原因となります。

この工夫をするために、私が2017年から使っているのが家庭用生ごみ処理機です。

スクリーンショット 2021-07-20 11.08.06.jpg

日本の自治体のうち、60%以上でこうした機械を買うための助成金制度があり、家庭用生ごみ処理機を半額で買うことができます。多い自治体だと上限5万円まで補助が出ます。

使い方は、生ごみを入れてスイッチを押すだけだからとても簡単。音も静かだし、キッチンの隅っこに置いておけば場所もとりません。熱風が出て乾燥させる仕組みです

電気を使うからエシカルじゃない、ですって?

心配ご無用。私は2020年夏から、実質100%再生可能エネルギーのハチドリ電力に切り替えています。いま契約している電力会社に連絡する必要もなく、インターネット上で数分で済むのでとても簡単。しかも大手電力会社の時より電気料金が安くなりました。明細も細かくわかりやすく出してくれます。支払った電気料金の1%は社会貢献に、もう1%は自然電力の発電所設立基金に使われます。これでやらない手はありません。皆さんもぜひ、ハチドリ電力をご検討ください。

さて、家庭ごみ処理機に話を戻すと、この処理機は、予約セットしておくことができます。電気代が安くなる深夜に動くようセットしておけば、電気代が安く済みます。動作音も静かです。

私はこれまで943回使って、242kgの生ごみを減らしてきました。

日本では、一般廃棄物(ごみ)の年間処理に2兆円以上使っています。生ごみが減れば、税金をごみ処理に費やす金額減らすことができるはずです。

コンポスト(堆肥)にする

最後の工夫はコンポスト(堆肥)にすることです。これで圧倒的に生ごみが減ります。しかも、コンポストにする過程で、生ごみが美味しい食事に姿を変えるのです。

私は野菜の硬い部分や玉ねぎの皮などは、密閉の袋に入れて冷凍庫にためておいて、ある程度の量になったら、深鍋に入れて、12リットルの水を入れて12時間煮込むようにしています。これ「ベジブロス」(洋風のだし)を作るのです。

スクリーンショット 2021-07-20 11.08.22.jpg

のベジブロスを使って、アスパラガスやグリーンピースのリゾットを作ったり、ドライカレーを作ったりしています。きのうはロシア料理のボルシチを作ってみました。

スクリーンショット 2021-07-20 11.08.39.jpg

そして、ベジブロスを作ったあとの野菜の搾りかすは、家庭用生ごみ処理機で乾燥させてから、コンポスト(堆肥)にします。

スクリーンショット 2021-07-20 11.09.03.jpg

「庭がない」とか「マンションだからできない」という声を聴きますが、私はマンションのベランダ2箇所に土を準備してコンポストを作っています。

私は大きなサイズのポリバケツで、籾殻や米ぬか、落ち葉の腐葉土を使っていますが、神奈川県葉山町が考案した「キエーロ」というコンポストを作る装置もあります。色々な種類があ、マンションのベランダで使えるものもあります。ご興味のある方はぜひこちらの葉山町のHPをご覧ください。

ここで家庭ごみをエシカルに処理するためのコツをおさらいしましょう。

▷「生ごみ予備軍」を減らす
▷重量の80%を占める水分を徹底的に減らす
▷コンポスト(堆肥)にする

この3つでしたね。

1人で100やるより、100人が1やる方が簡単だし、無理なく続けることができます。どれか1つ、やりやすいところから始めてみてはいかがでしょうか。

※本サイトに掲載の文章の部分的な引用を希望される場合は、サイト名・記事タイトル・著者を明記の上でご利用ください。また引用の範囲を超える文章の転載・写真の二次利用については編集部の許諾が必要です。

プロフィール
井出留美(いで・るみ)
食品ロス問題ジャーナリスト。2016年の国会議員向け講演会をきっかけに食品ロス削減推進法の成立に貢献。『賞味期限のウソ』(5刷)ほか著書多数。第二回食生活ジャーナリスト大賞(食文化部門)/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。
井出留美の記事一覧

最新記事

人気記事