国内外のエシカルな食に関する話題は取り上げられることが多いですが、では、実際に我々・消費者は、生活のなかでどのようなポイントを意識すれば"エシカル"になるのでしょうか?そんな日常の食生活のなかでも意識できるエシカルについて、食品ロスジャーナリスト・井出留美さんに教えて頂きます。今回のテーマは「食品がダメになったときの臭い、どう見抜く?」です。
新鮮な食材の香り、
五感を駆使して感じよう!
2019年、スウェーデンのゴットランド島へ取材に行ったとき、現地スーパー・COOPの店長さんが、面白いものを見せてくれました。なんと、牛乳の腐ったにおいがする香水だというのです。
「香水」といえば、普通はいい匂いのものですよね。では、なぜ腐敗臭の香水を・・・?
店長さんに訊ねたところ、「最近、牛乳がダメになったにおいを知らない人が増えてきたから、食育の意味をこめて、こういうのを作ったんです」とのこと。
「確かに!」と思い、「これ、買えますか?」と聞いたのですが、「非売品です」と言われてしまいました(笑)
こうした食品の腐敗臭を消費者に周知させる取り組みは、イギリスでも始まっているそうです。
イギリス人の3分の1は、食品が腐っているかどうかを判断するのに「賞味期限表示」を頼りにしています。「賞味期限」は、おいしさの目安に過ぎないのに、「品質が切れる期限」だと誤解して、何千トンもの食品が無駄に捨てられているということです。
そこで、期限が近づいた食品をお値打ち価格で販売するサービス「Too Good To Go」では、あるスクラッチシールを作りました。シールには食品のイラストが描かれており、スクラッチの部分を擦ると、その食品がダメになったときの匂いがするというのです。
食べ物が悪くなったとき、どういうにおいになるのかを知ってもらうことで、賞味期限表示の日付だけにとらわれて食べ物が捨てられるのを防ごうとしているのですね。
食品ロスを防ぐ
食材を腐らせないための工夫
賞味期限表示だけにとらわれるのはいけないですが、そうはいっても、気をつけた方がいい食品はあります。
たとえば牛乳。悪くなってくると、酸っぱいにおいがしますし、味も、酸味や苦味が出てきます。牛乳は、高温殺菌したものは「賞味期限表示」ですが、低温殺菌のものは、日持ちが5日以内のものにつけられる「消費期限表示」です。
品質の劣化は開封した時から始まります。容量が多いほうがお得ですが、飲みきれないのに無理して大容量を買い、あとで捨てるぐらいなら、最初から飲み切れる量を買いましょう。
私は低温殺菌の牛乳を買っています。自宅でヨーグルトを作っているので、ヨーグルトを作る日には牛乳をたくさん使います。ヨーグルトづくりなどで使い切れる自信があるときは、日付が迫っていて値引きされているものを選びます。
日本卵業協会によると、卵は通常産卵から7日以内にパックされ、賞味期限はパックされた時点から数えて2週間となっていることが多いそうです。しかし、夏場に生で食べることができる日数です。冬場、もしくは気温が10度以下で保存してあれば、産卵から57日間、生で食べることができるという実験データもあります。賞味期限が多少過ぎていたとしても、加熱調理すれば食べられる場合が多いのですね。でも、卵も、食べられる量だけを買うようにしましょう。
卵を買うとき、私はちょっと値段が高めの6個入りを選ぶことが多いです。毎日卵を食べるわけではないので、10個入りだと少し多いのです。
野菜は、新鮮かどうかが見た目でわかることも多いです。もやしやニラなどは、悪くなると、ドロっとして、茶色い汁が出てきますね。青梗菜などは、根っこが茶色くなってきたり、葉っぱが黄色く、乾燥した感じになってきます。
私は、葉もの野菜を買ってきたら、市販の野菜保存袋に入れ替えるようにしています。野菜保存袋は、スーパーの野菜売り場や、文房具屋さん、ホームセンター、100円ショップなどで売っています。
悪くなったときのにおいは、酸っぱい臭いや、アンモニア臭など、違和感のあるものです。
それを判断するためには、普段から新鮮な食材の香りを嗅いで、鼻でそのにおいを覚えておくことが必要です。
無駄にしたくないあまり、無理して食べるのでは本末転倒です。かといって、あまり過剰に心配すぎるのも無駄ばかり生んでしまいます。食材を購入する際は、使い切れるだけの適量を購入すること。そして、食材が新しいうちに見た目やにおいなどを、五感を駆使して普段から体感し、憶えておくことが大切ではないでしょうか。
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