2021年3月20日

空腹時に買い物をすると食品ロスが出やすい?

食品ロス問題ジャーナリスト 井出留美

国内外のエシカルな食に関する話題は取り上げられることが多いですが、では、実際に私たち、生活のなかでどのようなポイントを意識すれば"エシカル"になるのでしょうか?  新連載「エシカルに買おう!」では、日常の食生活のなかでも意識できるエシカルについて、食品ロスジャーナリスト・井出留美さんに教えて頂きます。今回のテーマは「空腹時に買い物をすると食品ロスが出やすい?」です。

空腹時に買い物すると
最大64%も買い物金額が増えます!

アメリカのミネソタ大学(当時)のアリソン・ジンシュー博士は、空腹時とそうでないときと比べて、買い物の金額がどのくらい違うか、実験しました。

すると、空腹時の方が、最大で64%も買い物金額が増えてしまいました。わかりやすく言うと、1,000円で済むはずが、1,640円も買ってしまったということになります。

ジンシュー博士によれば、空腹時は、胃の中からグレリンというホルモンが分泌され、それが「たくさん物を欲しい」という気持ちにさせるのだそうです。

世の中に、料理の本はたくさん出ていますが、買い物の仕方に関する本は、料理本に比べて少ないように思います。

中学校の家庭科の教科書を読んでみると、「食品の選択と購入」という単元があります。食品を買うときには、「安売りや大量販売の商品は、計画的に購入しないとむだにすることもあります」と書いてあります。また、買い物のあとには「計画的に買うことができたか」「無駄にせずに使い切れたか」など、評価や反省をするようにとあります。

これらはとても大事なことです。ただ、どのようにすれば計画的に買うことができるのか、あるいは、どのような買い方をすれば無駄買いがなくなるのかまでは書いてありません。

無駄な買い物をすると、お金がかかってしまいます。さらに、買った食べ物を捨てれば、お金を捨てることになってしまいます。せっかく稼いだ、大切なお金を捨てるなんて、もったいないですね。

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まずは、あるものでまかなう
食品ロスを減らす心がけ

では、買い物の時には、具体的にどんなことに気をつければいいのでしょうか。

お腹がすいているときに買い物にいかない。買い物に行く前に、飴をなめる、少し何か飲み物を飲むなどして、お腹を落ち着けてから行く。

買い物へ行く前に、まずは家の冷蔵庫や食品庫をチェックする。

・家にないものだけ買うために、買い物リスト(メモ)を紙や携帯電話などに書いて持っていく。

キャベツまるごと1個だと使いきれないようなら、多少割高でも、1/2個や1/4個を選ぶ。

一人暮らしで大きな野菜を使い切れない、上手に保存ができないようなら、カット野菜や冷凍野菜を活用する。

野菜を買ってきたら、野菜保存袋に入れ替えたり、下ごしらえしたりして、長く保存できるようにする。

このように、買い物に行く前も、行ったあとも、無駄買いを減らし、食品ロスを出さないために、気をつけることはたくさんあります。

先日、テレビ番組の収録にいったら、面白いお話を聴きました。4人のお子さんがいらっしゃる女性が、スーパーで買い物するとき、野菜売り場を飛ばして、まずは肉や魚コーナーへ行き、メインのおかずを決めてから野菜を選ぶようにしたら、家計の食費が安くなったそうです。

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スーパーは、入り口から入ると、まず、カラフルな野菜が目につきませんか。一説には、色とりどりの野菜を目にすることで、購買意欲が増し、いろんなものを買いたくなるのだそうです。

もしもそうであれば、野菜売り場を飛ばして肉と魚コーナーへ直行した女性の買い物方法は賢いということになりますね。

また、献立を考えるときには、料理を考えるより先に、「今、何が家にあるか」を確認したほうが、無駄買いや食品ロスが減ります。

あるものでまかなうということです。

これは、家だけでなく、飲食店でも同じです。

東京でレストラン・オギノを経営するシェフの荻野伸也さんは、契約している農家さんに、野菜の指定はしません。「今、畑にあるものを送って」「傷がついたのでも、なんでも送って」と頼んでいます。だから、野菜が届いてから、即興で、料理を考えるのです。まるで、その場で即興演奏するジャズのようです。

ミシュランの三つ星を獲得し、2016年には世界ベストレストラン50で世界一になったシェフ、マッシモ・ボットゥーラさんも同様です。厨房に到着すると、まずは冷蔵庫を開けて「今日は何があるんだ?」と言ってから料理をはじめます。

2015年にイタリア・ミラノでミラノ国際博覧会(ミラノ万博)が開催されたとき、ボットゥーラさんは、余剰食品を使って、経済的に困窮している人が食事できる「レフェットリオ(食堂)」を開きました。食品ロスの問題と、貧困問題を、同時に解決しようというわけです。その取り組みは、今でも続いており、ボットゥーラさんは、ヨーロッパの食品ロス削減キャンペーンの親善大使にも選ばれています。

無駄買いや食品ロスをなくすために、まずは、あるものでまかなうということ。

あるものでまかなう姿勢は、食の世界だけでなく、すべての分野において大切なことでしょう。

参考文献:
『捨てられる食べものたち 食品ロス問題がわかる本』(井出留美著、旬報社)
『新しい技術・家庭 家庭分野』(東京書籍)
『技術・家庭 家庭分野』(開隆堂)
『世界一のレストラン オステリア・フランチェスカーナ』(池田匡克著、河出書房新社)

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プロフィール
井出留美(いで・るみ)
食品ロス問題ジャーナリスト。近著『食品ロスをなくしたら、1ヶ月5000円の得!』(マガジンハウス)『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬舎新書、4刷)。第二回食生活ジャーナリスト大賞(食文化部門)受賞。Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018受賞
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