2020年12月26日

日本でも食べられる! 代替肉バーガーを徹底レポート

北海道大学大学院 市村敏伸

エシカルな食について、いま世界ではどのような話題が盛り上がっているのでしょうか。一橋大学在学中で佳い食のあり方を探究する市村敏伸が、海外のエシカルニュースをブリーフィングしてお届けしている本連載ですが、今回は「日本でも食べられる!代替肉バーガーを徹底レポート」と題して、年末特別編をお届けします。「代替肉バーガーって結局どうなの?」と気になっている方、必見です!

日頃、代替肉の動向など海外発のエシカルな食に関する話題をお伝えしている本連載ですが、私、市村は実は大のバーガー好きでもあります。どれくらいバーガー好きかというと、かつて都内のバーガー専門店をまわり、2ヶ月で40個以上のハンバーガーを食べたという、実にくだらない記録を持っているほどです。

そんな市村の詳しいバーガー遍歴については私の個人ブログをご参照いただければと思うのですが、自称バーガーフリークとして、日々代替肉の情報に触れていて感じていたことがあります。それは「実際、代替肉バーガーってどうなの?」ということ。そこで、今回は現在、都内で実際に食べることのできる代替肉バーガーを食べ比べ、その結果と個人的な感想をお届けします。

読者の皆さんもこれを参考に、代替肉バーガーを実際に召し上がられてはいかがでしょうか?

1. モスバーガー「グリーンバーガー」

ファストフード各社のなかで、最も早くからプラントベース分野で商品を展開してきたのが、モスバーガーです。同社は大豆由来の植物性タンパク質を原材料としたソイパティを使用した「ソイ野菜バーガー」を2015年から販売しており、今年3月、この新たなシリーズとして「グリーンバーガー」の販売を開始しました。

ということで、筆者もモスバーガーの店舗に足を運び、グリーンバーガーを実際に食べてきました。

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向かったのは都内にあるモスバーガー。レギュラーメニューの一覧とは別に、グリーンバーガーについてはレジ横にこのようなポップが用意されており、そこには「今日はフレキシタリアン気分!」という文字が踊ります。

フレキシタリアンとは、完全な菜食主義者ではないものの、日によっては意識的に動物性食品を摂取しない菜食主義をとる、柔軟(フレキシブル)な菜食主義者(ベジタリアン)のこと。欧米ではいま、このフレキシタリアン人口が急速に増加しています。英・BBCによると、イギリスでは肉類を日常的に食べる人でも、そのうち39%が意識的に肉類の消費量を減らしており、代替肉商品の売上の約半分はこうしたフレキシタリアンによる購買が占めているとも言われます。

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このグリーンバーガーの価格は税抜き538円。同じく野菜をふんだんに使った「モス野菜バーガー」が税抜き334円であるのに比べると200円以上高い価格設定となっています。実際に手にとってみると、ほうれん草を練り込んだというグリーンなバンズが目を引きますが、具材は、トマトやレタスといった野菜類とトマトソースに、ソイパティという至ってシンプルな構成です。

食べてみると、厚みのあるソイパティはしっとりとした食感で、鶏のひき肉のようなあっさりした味わいです。ソース類もトマトソースだけなのでしつこさがなく、全体的に"あっさりバーガー"といった感じでしょうか。グリーンのバンズも、モッチリとした食感が特徴的で、全体としてマイルドな仕上がりになっている印象です。ジャンキーなファストフードを求める方には少々物足りないかもしれませんが、「普段は肉を食べているけど、たまにはサッパリいきたい」というフレキシタリアンの需要にはしっかりと応えられる商品となりそうです。

2. フレッシュネスバーガー「THE GOOD BURGER」

モスバーガー同様に、日本発のファストフードとして代替肉商品を今年に入って展開し始めたのが、外食大手のコロワイドが展開するフレッシュネスバーガーです。

フレッシュネスバーガーは今年8月、大豆パティを使用した「THE GOOD BURGER」(ザ・グッドバーガー)の販売を一部店舗限定で開始。10月には全店での提供が開始され、11月にはシリーズ第二弾となる「THE GOOD BURGER(アボカド)」の販売も開始されました。

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都内のフレッシュネスバーガーの店舗に向かうと、入り口にはザ・グッドバーガーのポスターが貼られています。ポスターには「地球にGOOD! 健康にGOOD! おいしさにGOOD!」というキャッチフレーズもあり、モスバーガーに比べると、代替肉のソーシャル・グッドな側面を強く押し出している印象です。

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今回はザ・グッドバーガーを二種類それぞれ注文しました。なお、価格は、通常のザ・グッドバーガーが480円で、アボカドバージョンが550円と、ノーマルな「フレッシュネスバーガー」が420円であることを踏まえるとモスバーガー同様にやや高めの価格設定と言えるでしょう。

フレッシュネスは代替肉を提供する日本の外食チェーンとしては珍しく、使用する代替肉の提供元を公表しています。今回、フレッシュネスが使用する大豆パテは、熊本に拠点を置くDAIZ(ダイズ)社製のもの。ダイズ社は発芽大豆を原材料とする独自の技術で旨味成分であるアミノ酸を多く含んだ代替肉の開発に取り組んでいることで知られ、世界的にも知名度のある日本の有力代替肉メーカーです。

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こちらは通常のザ・グッドバーガー。見た目からも分かるように、テリヤキソースを使ったテリヤキバーガーのスタイルで提供されます。肝心の大豆パテですが、しっとりとした食感のなかに、"クニュッ"とした肉らしい噛み応えを感じるのが特徴です。単調な印象になりがちな大豆パテに濃い味のテリヤキソースがたっぷりと絡んでおり、ファストフードに求められるジャンキーさもしっかり表現されています。まろやかなマヨネーズソースとの相性もよく、バーガーとしての一体感を楽しみながら最後まで美味しく食べ進めることができました。

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一方、こちらはアボカドバージョンのザ・グッドバーガー。たっぷりのアボカドや生オニオンと共に大豆パテがサンドされており、テリヤキとはうって変わり、さっぱりとした味付けのバーガーです。パテにはソースなどが付けられておらず、大豆パテ単体ではどうしても旨みが弱い印象です。さらに、アボカドなどパテ同様に柔らかい食感の野菜類と一緒に食べることで、せっかくの大豆パテの存在感が薄まってしまうようにも感じます。

アボカドや生オニオンがたっぷりで爽やかな味わいのバーガーですが、ハンバーガーに求められる具材同士の一体感という意味では、少々ちぐはぐな印象が拭きれません。両者食べ比べた感想として、個人的にはテリヤキバージョンに軍配を上げたいと思います。

3. ロッテリア「ソイ野菜バーガー」

日本を代表する老舗バーガーチェーンであるロッテリアも、2019年から大豆パテを使用した代替肉バーガーを販売しています。当初はモーニング限定の販売だったものが、今年7月にレギュラーメニュー化し、代替肉の存在感はここロッテリアでも高まっていると言えるでしょう。

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筆者はモーニングの時間帯にロッテリアの店舗に出向きましたが、ソイ野菜バーガーは単品で370円と、他の朝食メニューと比較してもそれほど高いという印象はありません。

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今回注文したのは「ソイ野菜チーズバーガー」。レタス、トマト、生オニオンなど、たっぷりの生野菜の存在感が印象的で、ソース類はケチャップとマヨネーズソースのみです。大豆パテはフレッシュネス同様に、薄めのスライスながら柔らかいしっとりとした食感で、特にソースなどで味付けもされていないことからフレッシュネスのアボカドバーガーに近いように感じます。

しかし、フレッシュネスのアボカドバーガーとは異なり、生野菜のシャキッとした食感と大豆パテのしっとり感が良いコントラストになり、バーガーとしての完成度は高い印象です。爽やかながら、しっかりバーガーとしても成立しており、朝食に楽しむ一品としては最適ではないでしょうか。

ここまで見てきたように、日本資本チェーンの代替肉バーガーは総じて、大豆パテを使い既存のバーガーを再現するということに重きを置いていないように感じます。むしろ、大豆パテのさっぱり感を逆手にとり、ヘルシーで爽やかなバーガーを演出することで、フレキシタリアン層やこれまでファストフードを敬遠していた健康志向の強い顧客層の取り込みを図っているのかもしれません。

もちろん、それは代替肉市場の拡大にとってひとつ重要な方針ではありますが、やはり、いかに既存のバーガーを代替肉で再現するかというシビアな課題に取り組むことは今後必須となるでしょう。その意味で、参考になるのが、代替肉の本場でもある米国など、海外資本のバーガーチェーンの動向です。

4. バーガーキング「プラントベースワッパー」

米国に拠点を置くバーガーキングは今月、大豆パティを使用した「プラントベースワッパー」の発売を日本で開始しました。バーガーキングは早い時期から大手代替肉メーカーのインポッシブル・フーズと提携して、米国市場で代替肉バーガーを提供しており、欧州やニュージーランド、フィリピンなどでも代替肉バーガーの提供を始めています。

いわば、「代替肉バーガーの老舗」とも言えるバーガーキングが、ついに日本でも代替肉の提供を開始したということで、発売日の12月11日に、さっそく筆者も都内のバーガーキングの店舗に向かいました。

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店舗入り口横にプラントベースワッパーの大きなポスターが掲げられています。昼時でレジには行列ができていましたが、プラントベースワッパーを注文しているのは筆者の他に男性客が一名のみでした。

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こちらがプラントベースワッパー。価格は単品で590円と、通常のワッパー(490円)よりも100円高い価格設定となっていますが、比較用に買い求めた通常のワッパーと比べてもバーガーのサイズに違いはなく、これまでの代替肉バーガーのなかでは圧倒的に大判です。なお、今回の代替肉パテの供給元は現時点で公表されていませんが、海外の一部メディアでは、同社がフィリピンなどで提携している豪州の代替肉メーカー・v2food社のパテが使用されているとも報じられています。

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バーガーの内容は、パテの他にトマト、生オニオン、レタスなどの野菜類に、ケチャップ、マヨネーズソースとシンプルで、あくまでパテの風味でバーガーを食べさせる仕様となっています。同社HPなどによると、このパテは独自の「直火焼き製法」で調理されたもので、確かに、一口食べるとスモーキーな香りが口いっぱいに広がります。これはモスバーガーやフレッシュネスにはなかった特徴です。

食感はよく火入れをした牛肉のパテに近く、若干パサついている感じもあります。しかし、薫香の効果もあって大豆臭さは感じず、スモーキーなパテと生野菜との程よいバランスで、ジャンキーさを楽しみつつ最後まで飽きずに美味しく食べられました。今回食べ比べたバーガーの中では圧倒的にボリューム感があり、さすがバーガーキング、しっかりと"ファストフード"として仕上げてきているなという印象です。

5. ザ・ヴェジタリアン・ブッチャー「チキンバーガー」

今年、東京・池袋にオープンした海外の代替肉の最前線を体験できるプラントベースバーガー専門店についても、最後にご紹介しようと思います。

今年8月、東京・池袋にオープンしたプラントベースバーガー専門店のThe Vegetarian Butcher(ザ・ヴェジタリアン・ブッチャー)は、オランダに拠点を置く代替肉メーカーであるThe Vegetarian Butcherの日本における初めての実店舗です。同社は世界30カ国で代替肉を販売しており、日本に進出している数少ない世界的な大手メーカーです。

メニューは、プラントベース・チキンと、プラントベース・ビーフがラインナップされており、筆者は今回、1080円のチキンバーガーを注文しました。

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こちらがチキンバーガーの全容ですが、このままだとパテの様子なども分かりにくいため、カットして断面を見てみることにします。

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上のバンズのすぐ下にあるのが代替肉のプラントベースチキンですが、この見た目からして既に鶏肉の質感がよく再現されていることが分かります。実際に食べてみても見た目の印象通り、鶏のムネ肉に非常によく似た食感と味わいで、これまで見てきた大手チェーンで提供されているものと比較して、その再現度には大きな差があるように感じました。大豆臭さなどもほとんど感じず、代替肉を食べているとは思えない程です。ただ、トーストの弱いバンズとの相性などの面では大手チェーン各社の商品には劣ってしまう印象も持ちました。

何はともあれ、代替肉のレベル自体は非常に高い一品ですので、海外の最新の代替肉のレベルがどれほどのものかを知りたい方には、このザ・ベジタリアンブッチャーの代替肉バーガーを強くお勧めしたいと思います。

あなた好みの代替肉バーガーは?

ということで、56種類の代替肉バーガーを食べ比べてきたわけですが、最後に各商品の特徴を大まかにまとめてみます。

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ということで、代替肉バーガー徹底レポート、いかがでしたでしょうか?

2020年、日本でも徐々に広がり始めた代替肉市場ですが、まだまだ代替肉は一般に広く認知され、かつ理解されている食品ではありません。そのなかで、大手バーガーチェーンなどでの代替肉商品の販売は、親しみやすいファストフードの場面から代替肉が社会に浸透していくきっかけとなるでしょう。読者の皆さんも、代替肉の商品を街で見かけられた際には、実際に召し上がられてはいかがでしょうか。

2020年1223日執筆

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プロフィール
市村敏伸(いちむら・としのぶ)
1997年生まれ、一橋大学法学部卒業。大学在学中にライター活動を開始し、現在は北海道大学大学院農学院に在籍中。専門は農業政策の形成過程に関する研究。
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