はじめてのエシカルQ&A

数字でわかる食品ロス
スーパーに並ぶ商品には「製造日から賞味期限までの○分の1以内を納入する」という暗黙のルールがある

Q スーパーに並ぶ商品には「製造日から賞味期限までの○分の1以内を納入する」という暗黙のルールがある

A

1. 3

2. 5

3. 6

foodloss_2020.11.11_01.jpg

答えは1です!

コンビニなどで、大好きなカツ丼が1つだけ残っていた。喜んでレジに持っていったら「これは売ることができません」と言われた。期限表示を見ると、まだ消費期限は切れていない。なんで売ってくれないの? ——そんな経験をしたこと、あるでしょうか。

実は、賞味期限や消費期限の手前に「販売期限」というものがあり、それが切れると販売できないルールがあるからです。

「販売期限」だけではありません。その手前には「納品期限」もあります。これを食品業界では3分の1ルール」と呼んでいます。

食品業界の3分の1ルールとは、製造日から賞味期限までの期間を3等分し、最初の3分の1が、メーカーから小売店に納品する「納品期限」、次の3分の1が、小売店で販売できる「販売期限」となっています。
こんなに短い納品期限は日本の特徴で、このルールで返品される金額は年間809億円と言われます。納品期限は、アメリカは2分の1、フランスは3分の2と長く設定されています。日本でも、菓子と飲料に関しては、アメリカ並みにしましょうという動きが2014年ごろから始まっています。

foodloss_2020.11.11_02.png

3分の1ルールは法律ではなく、食品業界のルール(商慣習)に過ぎません。

誰が、いつ、作ったのでしょう?

一説には、1990年代、全国展開する大手スーパーが設定し、他の小売も追随したと言われています(201211月、日経MJ=日経流通新聞)。

なぜ、このようなルールが決まったのでしょうか。

スーパーは、できる限り長く賞味期限が残っているものを売りたいから。

賞味期限が切れたものを商品棚に並べておくと、お客さんからクレームが来てしまうから、切れる前に早めに撤去する。賞味期限や消費期限ぎりぎりのものを売ると、お客さんが家に持って帰って置いておいて、いざ食べようとするときに期限が切れてしまっていた……。そういうことをなくしたいから、ということでしょうか。

実際、大手コンビニ本部の方に聞いてみると、おにぎりやサンドウィッチ、弁当などは、消費期限が切れる13時間手前で販売期限が切れるそうです。「なぜギリギリまで売らないのですか?」と聞いたところ、「お客さんが家に持って帰って食べる時間を考えて」とのことでした。

大手コンビニで、店員さんが商品のバーコードにあてる機械を持って店内を歩いています。ピッと商品にあててみると、「賞味期限が○月○日以前のものは廃棄」と、賞味期限が切れていないにもかかわらず、「捨てなさい」という指示が出てきます。

foodloss_2020.11.11_03.png

普段でも「もったいない!」と思いますよね。なおさらもったいないと思ったのが、2018年夏、西日本豪雨のときでした。コンビニに食品を運ぶトラックは、道路が寸断されて思うように進めません。販売期限の1時間前に店に着きました。店に並べますが、売る時間はほとんどありません。仕方なく、全部廃棄したそうです。取材したコンビニのオーナーさんは「大雨で避難して食べ物に困っている人にあげたい」と、せつなそうに話しました。

メーカーは、自分たちの商品を売ってくれる小売の課すルールに従わなければ、自分の会社の商品を売ることができません。では、小売は誰を見ているでしょう?

それは「お客様」、わたしたち消費者です。

消費期限表示のものは、おおむね5日以内の日持ちのものにつけられるから、ギリギリまで売るのは難しいかもしれません。でも賞味期限は「おいしさのめやす」です。わたしたちが「賞味期限ギリギリまで売ってください」とみんなで言えば、小売の人も耳を傾けるのではないでしょうか。イギリスでは、市民の声が大手スーパーの態度を変え、捨てられる食べ物を減らしています。社会やルールを変えるのは、私たち一人ひとりの市民の力なのです。

※本サイトに掲載の文章の部分的な引用を希望される場合は、サイト名・記事タイトル・著者を明記の上でご利用ください。また引用の範囲を超える文章の転載・写真の二次利用については編集部の許諾が必要です。

プロフィール
井出留美(いで・るみ)
食品ロス問題ジャーナリスト。2016年の国会議員向け講演会をきっかけに食品ロス削減推進法の成立に貢献。『賞味期限のウソ』(5刷)ほか著書多数。第二回食生活ジャーナリスト大賞(食文化部門)/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。
井出留美の記事一覧

最新記事

人気記事