はじめてのエシカルQ&A

数字でわかる食品ロス
ハンバーガー1個に使われている水の量は?

Q ハンバーガー1個に使われている水の量は?

1. 3,000リットル

2. 300リットル

3. 30リットル

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答えは1. 3,000リットルです!

ハンバーガー、好きですか?
大人や子どもに人気のメニューですね。

ハンバーガーそのものを眺めてみても、そこに水は見えません。
でも、ハンバーガーの材料(パン、レタス、トマト、牛肉など)が生産される過程で使われた水をすべて足すと、3,000リットルにもなる、というのです。
イギリスの科学者、スティーブン・エモットさんは、著書『世界がもし100 億人になったなら』で、そのことを指摘しています。
一般家庭の浴槽の水量は、200リットルから300リットルです。3,000リットルとは、家庭のお風呂15杯分にも相当します。ハンバーガー1個を捨てることは、家庭のお風呂15杯分もの水を捨てることでもあるのです。

なぜ、こんなにも多くの水が必要なのでしょう?

それは、ハンバーガーに入っている牛肉を生産するのに使われる水が莫大だからです。

1キログラムのお米を栽培するのには、およそ3,700リットルの水が必要です。
1キログラムの牛肉を生産するのには、この5倍、20,000リットル以上もの水が必要なのです。
牛肉用の牛を育てるには、水のほかに、大量の飼料(エサ)も必要です。その飼料を栽培するのにもまた、水が必要になるため、このような大量の水が必要になってくるのです。

この水の量のことを「仮想水(バーチャルウォーター)」と呼びます。
ロンドン大学名誉教授のアンソニー・アラン氏により、1990年に提唱されました。食料を輸入している国が、もし、その食料を自分の国で生産すると、どのくらいの水が必要になるかを計算したものです。
環境省の公式サイトには、バーチャルウォーターを計算できる計算式のページがあります。

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東京大学サステナビリティ学連携研究機構の沖大幹教授の試算によれば、日本の仮想水輸入量は世界一だそうです。
2005年に日本が海外から輸入したバーチャルウォーター量は800億立法メートルにも及びます(東京大学 沖大幹教授のグループが2000年に算出した値を2005年に更新し、新たな値を加え、環境省と日本水フォーラムが算出した値)。つまり、日本人一人当たり50万リットルもの水(バーチャルウォーター)を輸入しているという計算になるのです。

日本では、水道の蛇口をひねれば、飲める水が出てきます。
でも2017年時点、世界の22億人が、安全に管理された飲み水を使用することができていません(ユニセフによる)。
そこで、SDGs(エスディージーズ)では、6番のゴールで、2030年までに、すべての人々が、安全で安価な飲料水を入手できることを目指す、としています。

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SDGs6番のゴール(出典:国連広報センターHP

ハンバーガー自体には水は見えません。

ハンバーガーそのものに水は見えなくても、それが作られる裏側では、世界の22億人が到達できていない、貴重な水資源が使われているのです。サン=テグジュベリの小説『星の王子様』で、王子様は「いちばん大切なことは目に見えない」と語っています。
目に見えないものまで見るように心がけていきたいですね。

参考資料
『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬舎新書)井出留美
『捨てられる食べものたち 食品ロス問題がわかる本』(旬報社)井出留美

ユニセフ公式サイト 安全な水
朝日新聞 グローブ 日本は意外な「水輸入大国」 仮想水貿易でわかる水問題のグローバル化

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プロフィール
井出留美(いで・るみ)
食品ロス問題ジャーナリスト。2016年の国会議員向け講演会をきっかけに食品ロス削減推進法の成立に貢献。『賞味期限のウソ』(5刷)ほか著書多数。第二回食生活ジャーナリスト大賞(食文化部門)/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。
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