はじめてのエシカルQ&A

数字でわかる食品ロス
食品ロスは日本でどのくらいあるでしょうか?

  1. 東京都民の年間食事量
  2. 愛知県民の年間食事量
  3. 大阪府民の年間食事量

消費期限の手前の「販売期限」で棚から撤去され廃棄されるコンビニの弁当類(コンビニオーナー提供)。

答えは「① 東京都民が一年間に食べる量」です!

東京都民は、およそ1300万人。都民の年間食事量とほぼ同じ量の643万トンが食品ロスです(平成28年度食品ロス年間発生量 2019年4月12日農林水産庁発表データより)。これだけたくさんの人たちが、一年間、食べていけるだけの食料を、わたしたちは、毎年、捨ててしまっています。

2011年3月11日、東日本大震災が起こりました。被災地はもちろん、首都圏でも、スーパーやコンビニの食べ物が棚から消えました。いつでも、なんでも、どこにでも食べ物がある、というのは、当たり前の状態ではないのです。

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東日本大震災後、勤務先の食品を支援物資としてトラックで運び、積荷を下ろす筆者

東日本大震災から年月が経ち、今でも避難している方々がいらっしゃいます。それなのに、わたしたちは、食べ物のありがたみを忘れてしまっているように見えます。

イタリアで、代々、肉屋さんを営む男性は、豚が食肉として処理される現場に行くと、「とてもつらい」と涙を流します。
吊るされ、血を流す、豚たち。
残酷な光景です。
でも、これが、いのちをいただく、ということなのです。

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ベトナム・ハノイで豚の丸焼きを作るため処理される豚(筆者撮影)

魚も同じ。
野菜も果物もそうです。
人は、生きていくために、彼らの命をいただいています。
食べ物をいただく、ということは、命をいただく、ということ。
命を捧げたものたちに感謝し、その命を最後までいただくのが、彼らに対する敬意です。

東京のある小学校では、牛乳の飲み残しが毎日たくさん出ていました。
牛乳のアレルギーなら仕方ありません。
そうではなく、嫌いだから飲まない子が大勢いたのです。

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牛肉になる牛(筆者撮影。学校へ連れてきた牛そのものではありません)

ある学校栄養士さんは、その小学校へ、牛を一頭連れてきました。
こどもたちは牛のあたたかさに触れました。
生まれて初めて、乳搾りをしました。
牛からできたバッグやベルトを持ち寄りました。
栄養士さんは、牛の血液から牛乳ができていることをこどもたちに伝えるため、
赤い絵の具を溶いた水を200本のペットボトルに入れ、見せました。

この授業のあと、牛乳の飲み残しが激減しました。
こどもたちは、牛乳は、単なるモノではなく、
牛が命を削って生みだしたものだと理解したから、ではないでしょうか。

食べ物は、命そのものなのです。

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プロフィール
井出留美(いで・るみ)
食品ロス問題ジャーナリスト。2016年の国会議員向け講演会をきっかけに食品ロス削減推進法の成立に貢献。『賞味期限のウソ』(5刷)ほか著書多数。第二回食生活ジャーナリスト大賞(食文化部門)/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。
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