はじめてのエシカルQ&A

知っておきたい海のいま
日本人が食べている魚の自給率は、どれくらいでしょう?(2017年現在)

  1. 110%
  2. 78%
  3. 55%


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ぱくたそ(www.pakutaso.com)

答えは「③ 55%」です!

日本は水産王国で、獲れる魚の量も質も世界一 ――今もそう信じている人は多いのではないでしょうか。実際、鮨は日本のキラーコンテンツのひとつですし、和食は世界文化遺産。それに豊洲市場はいつも観光客で大賑わい。「水産王国」に疑いを抱く機会はないかもしれません。

でも一度、スーパーの魚売り場をじっくり眺めてみてください。

私が住む東京では、棚に並ぶ魚のうち、今ではかなりの割合が外国産です。サバやシシャモ、アジにマグロ、鮭もうなぎも、カレイもタコもカニもそう、、、、日本産はよく気を付けて探さなければならないほど、目立たない状況になってしまいました。2017年度の水産白書によると、日本の食卓に上がる水産物のうち自給率は55%。「水産王国」は、もうとっくの昔に過去の話なのです。

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http://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/h30/attach/pdf/30suisan_3-4.pdf
(『水産白書2017』147ページより)

四方を海に囲まれた日本で、昔から見慣れているはずのありふれた魚種を、なぜ輸入しなければならないのでしょうか。

答えは簡単で、近年は魚が獲れず、足りなくなっているからです。もしくは、日本で水揚げしている魚には幼魚のサイズが多く、大きく太ったものが少ないからです。私はいろんな漁港を訪ねる機会があるのですが、これまでどこの港でも必ず、こんなやりとりがありました。
「水揚げはどうですか?」
「いやぁ、だめだねぇ。昔みたいに獲れたらいいけど」

2015年の日本の総漁獲高は469万トン。2017年は431万トンでした。日本の総漁獲高のピークは1984年に記録した1282万トンですから、30年の間になんと約1/3にまで減ったことになります。

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出所:農林水産省

魚が減った理由には、気候温暖化による水温上昇、化学物質による海の汚染、低栄養化などさまざまありますが、一番はやはり「獲りすぎ」と言われています。残念ながら日本には、これまで国による漁獲制限がほとんどなく、現時点ではまだ実効的な資源管理のシステムがないのです。

海の中は、陸からは見えませんよね。だから、獲っても獲っても魚はいると勘違いされがちです。でも本当は、水産物は限りのある資源。自ら卵を産んで増えてくれるとはいえ、自然に増える分を越えて獲り続ければ当然、坂道を転がるようにどんどん減ってしまうのです。

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プロフィール
佐々木ひろこ(ささき・ひろこ)
食文化やレストランをメインフィールドに雑誌等に寄稿するフードジャーナリスト。2017年にChefs for the Blueを創設し、後に社団法人化。代表理事として東京のトップシェフ約30名とともに海洋資源の保全に向けた啓蒙活動に取り組み、様々なイベントを実施している。
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