2022年12月20日

「循環型のビール」とは一体なに? RISE & WINのクラフトビールづくり

食品ロス問題ジャーナリスト 井出留美

今や、多くの人が食品ロスの問題に関心を持っていることでしょう。食品ロスは「もったいない」だけではなく、環境問題としても重要です。では、食品ロスを減らすためには、一体どのような取り組みが社会に広がらなくてはならないのでしょうか。食品ロス問題ジャーナリスト・井出留美さんのナビゲートで、我々がお手本とすべき食品ロス削減の"最前線"をご紹介します。

ゼロ・ウェイストの町でつくる
「循環型のビール」とは

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RISE & WIN店内(撮影:株式会社office 3.11

2013年、日本で初めてゼロ・ウェイスト(ごみゼロ)宣言をした自治体があります。それが、徳島県上勝町(かみかつちょう)です。人口1,450人。2018年には「SDGs未来都市」に選ばれました。

2015年530日(「ごみゼロの日」)、クラフトビールを醸造して提供するRISE & WIN Brewing Co.(ライズ&ウィン・ブルーイングカンパニー、以下RISE & WIN)が上勝町に誕生しました。RISEは上勝町の「上る」という文字に由来し、WINは上勝町の「勝つ」という文字からとったものです。「クラフトビール」は、大手メーカーが大量につくるビールとは異なり、小規模な醸造所でつくられる、個性豊かなビールを指します。RISE & WINではビールの量り売りもしています。

2022年10月下旬、RISE & WINが新たなビールを発売しました。それが「reRise Pale Ale(リライズペールエール)」です。RISE & WINではビールの醸造過程で年に20トンモルトかすが発生します。これを発酵させ、廃液と共に液体肥料(液肥)にし、畑に撒いて、そこで育てた大麦からビールを作ったのです。こうした「循環型農業」への取り組みは、店長の池添亜希さんが中心となって、2021年秋から進めてきたものです

ビールの原料となる大麦を育てるのはもちろん、ランチで提供する野菜も循環型農業の仕組みで有機栽培しました。

この液肥を撒くと、作物に害虫が寄り付かず、育てられた作物の甘味が増すのだそう。

RISE & WINでは、他にも面白い取り組みを行っています。たとえば、ホワイトビールには、柚香(ゆこう)という柑橘類の皮を使っていますし、黒ビールには規格外の鳴門金時芋を使っています。

は2019年にRISE & WINを訪問し、こうしたクラフトビール作りの取り組みを教えて頂きました。その際の模様はぜひ以下の記事からご覧ください。

柑橘類の皮や規格外の鳴門金時も使うゼロ・ウェイストのクラフトビール 徳島県上勝町のRISE & WIN(井出留美、Yahoo!ニュース個人、2020/3/16

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左右が「reRise Pale Ale(リライズペールエール)」、真ん中がホワイトビール(筆者撮影)

他にも、売上の一部を国際NGOに寄付する「ドネーションビール」や、国の重要無形民俗文化財に登録された特産の乳酸発酵茶「阿波晩茶」を使ったIPAもあります。

ビールの取り組みも面白いのですが、建物も個性的です。上勝町で使われなくなった学校や住宅の建材を使ったり、空き瓶でシャンデリアを作ったりしているのです。池添さんによれば、建築に携わる方も店を訪問されるとのこと。

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写真:RISE & WIN外観(株式会社 office 3.11撮影)

徳島県上勝町は、徳島市内から車で1時間ほど。徳島県を訪れる機会があればぜひ足を運んでみてください。

東京でビールを味わいたい方には、オンラインショップや、東京都港区のお店もありますよ。

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プロフィール
井出留美(いで・るみ)
食品ロス問題ジャーナリスト。2016年の国会議員向け講演会をきっかけに食品ロス削減推進法の成立に貢献。『賞味期限のウソ』(5刷)ほか著書多数。第二回食生活ジャーナリスト大賞(食文化部門)/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。
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