
食品ロスの問題は「どう無駄なく再利用するか」というリユース・リサイクルの話題が注目されがちです。しかし、食品ロス問題ジャーナリスト・井出留美さんは、最も重要なことはリデュース、つまり余剰な食品をそもそも出さずに食品ロスを減らすことにあると言います。では、リユースやリサイクルではない、食品ロス対策とは一体なんなのでしょうか。今回は「スーパーでの食品ロス対策」をテーマに取り組みの最前線を教えていただきます!
期限ギリギリまでの販売で
食品ロスは3割減る!
食品ロス問題に取り組んできて、これまで耳にしてきた言葉があります。
「食品ロスを減らすと経済が縮むから減らしちゃいけない」
「食品ロスは必要悪だ」
「食品ロスは予備だから減らしたら飢餓が起きる」
本当にそうでしょうか。すべての食品が備蓄できるわけではありません。
コンビニやスーパーで食品ロスになりやすいものは、いわゆるデイリー食品と言われる、日持ちしない食品です。これは、「予備」や「備蓄」として保管しておくことができません。
食品ロスを減らしながら売上をキープする、あるいは売上を上げている事例は、これまでの記事でも紹介してきた通り、複数あります。特に、スーパーでの事例については、岡山県のスーパー・ハローズさんの取り組みをご紹介しましたが、もう1つ注目していただきたいのが、京都市が実施したスーパーでの実証実験です。
一般のコンビニやスーパーでは、賞味期限や消費期限ぎりぎりまで食品を売りません。お客さんが買ってから、家に持ち帰ったとき、まだそれでも消費期限や賞味期限まで余裕があるようにしているのです。それが、以前にもご紹介した3分の1ルールの「販売期限」です。
でも、賞味期限や消費期限まで、まだだいぶ間があるのに、処分してしまうのはもったいない話です。
そこで、京都市は、平成29年度に、市内5店舗のスーパーで、賞味期限や消費期限ぎりぎり(当日、もしくは1日前)まで売ったら、食品ロスがどれだけ減り、売上がどれだけ上がるかの実証実験を1ヶ月間おこないました。通常は短く設定されている「販売期限」を延長する、ということですね。
実験の結果、食品ロスは約10%も削減できました(数量ベース)。そして、なんと売上も約6%増加したのです。
さらに、その翌年の平成30年度には、10店舗に対象を広げて同様の実験をおこないました。その結果、食品ロスは31.8%減り(数量ベース)、売上数量は約1%増加、売上金額も約2%増加という結果になったのです。
食品ロス対策の先進都市
京都の取り組み
京都市は、ほかにも、宴会での食べ残しが、幹事の声がけによってどう変わるかといった実証実験を積極的におこなっています。その実験で得られたデータをもとに、事業者や消費者に向けて、啓発をおこなっています。
こうした数字のデータがあることで、説得力が高くなります。このような取り組みを積極的におこなっている自治体は、全国でも数少ないです。
京都市は、2000年には年間82万トン発生していた廃棄物を、2019年には年間41万トンにまで削減しました。つまり、「半減」を達成したのです。京都市は、食品ロス削減やごみ削減において、ロールモデルの自治体であるといえます。
短期間しか販売できない、日持ちしない食品のロスは、出来る限り減らすことで資源もお金も節約することができます。
この連載では繰り返しお伝えしていますが、大切なことなので繰り返します。食品ロスを減らしながら、売上をキープする、あるいは売上を増加させることは十分可能なのです。
<参考資料>
京都市情報館 食品を取り扱う小売店における販売期限の延長等の取組
京都市 販売期限の延長による食品ロス削減効果に関する調査・社会実験報告資料(平成29年度の社会実験の結果)
京都市 販売期限の延長による食品ロス削減効果に関する調査・社会実験報告資料(平成30年度の社会実験の結果)
井出留美『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬舎新書)
※本サイトに掲載の文章の部分的な引用を希望される場合は、サイト名・記事タイトル・著者を明記の上でご利用ください。また引用の範囲を超える文章の転載・写真の二次利用については編集部の許諾が必要です。
