今こそ、日本の発酵調味料の出番です。今回訪ねたのは、昭和30年代から無農薬の米を栽培、昔ながらの「静置発酵」という製法で酢づくりを続ける飯尾醸造。まろやかコクと旨味をもつ「富士酢」を使った、春野菜たっぷりの沢煮椀をご紹介します。酢の成分となるクエン酸や酢酸は、疲労の原因となる乳酸の分解を促してくれます。そう、心にも疲れがつもってきた今こそ、たっぷりの野菜と酢で体調を整えてくださいね。
文・有賀薫(スープ作家) 撮影・柿本礼子 編集・神吉佳奈子
酸っぱいではなく、
スープの味の決め手に
酢をよくスープの味つけに使いますというと「酢ですか......?」驚いたような顔をされます。
私は野菜中心のスープをよく作ります。日本の野菜は総じて甘いため、野菜でスープを作ると、ちょっと甘すぎるな......と感じることがあります。そんなときに酢をほんのちょっと使うと、ぐっとバランスがよくなることが多いのです。
とくに、飯尾醸造の「富士酢」は、普通の穀物酢にはない深い旨味があります。この旨味が、スープの旨味を底上げしてくれるのです。そこで今回は春野菜をたっぷり使い、富士酢を味の決め手に使う、沢煮椀を作ってみました。
沢煮椀、というのは、千切りの具材をたっぷり使った汁物です。「沢」は、沢山という意味。具材がたっぷり入った塩味のおつゆに豚の脂がちょっと入るのが特長で、豚バラ肉を使うレシピが多いです。
この沢煮椀を、キャベツや新にんじん、セロリ、スナップエンドウなど春野菜を使って作ろうと思います。豚肉はロースの薄切りを使って、さっぱりめに仕上げます。
酢は、酸っぱいと感じるほど入れないでほしいのです。隠し味として入れると、ぼやけていた味の輪郭がきりっと締まり、それぞれの野菜の味も際立ち、味に奥行きが出ます。
今回選んだ「富士酢プレミアム」の場合は、酢独特の匂いも少ないのに旨味が強いため、とてもスープには使いやすいのです。スーパーでよく見かける米酢や穀物酢では、なかなかこうはいきません。
野菜の滋味が際立つ
春野菜の沢煮椀
▼材料(4人分)
豚ロース薄切り肉 150g
キャベツの葉 大2枚(200g)
新たまねぎ 1/2個
セロリの茎 1/3本(3~40g)
にんじん 1/3本(80g)
絹さやまたはスナップエンドウ 数本
昆布 5~8センチ
塩 小さじ1
富士酢プレミアム、または純米富士酢 小さじ1
片栗粉 大さじ1
オリーブオイル 大さじ1ほど
胡椒(好みで) 少々
【下準備】
昆布は1ℓの水に2時間ほど漬けて、昆布の水だしをとっておく。
▼作り方
1. 野菜を刻む
キャベツ、新たまねぎ、セロリ、にんじんはすべて千切りに。絹さやは筋を取り、さっとゆでて斜めに千切りにします。スナップエンドウの場合はゆでてからさやを割って豆と分け、さやだけ細く刻みましょう。今回は春野菜を使いましたが、冷蔵庫にある野菜でOK。とにかくたっぷり使って、すべて千切りにしてください。
2. 豚肉を湯通しする
豚肉も千切りにして、薄く塩(分量外)と片栗粉をまぶします。熱湯を沸かした湯に入れ、色が変わったらすぐにザルに上げておきましょう。
3. 野菜を蒸し煮するように炒める
鍋を中火にかけ、オリーブオイルをひいて、たまねぎ・にんじん・セロリを炒め、次にキャベツを炒めていきます。水分を大さじ1ぐらい補いつつ、焦げないよう、また蒸し煮するような感覚で炒めます。
4. サッと煮て、仕上げに酢を加える
全体がしんなりしたら②の肉と塩小さじ1を加え、昆布だし800㎖を加えて煮立てます。アクが出たらすくってください。沸騰したら中火にして5分ほど煮て、酢を加えます。
味を見て塩で整え、最後に絹さやを加えて、火を止めます。野菜のシャキシャキ感を残すよう、火を通しすぎないことが肝心です。器に盛ったら、好みで胡椒をかけて召し上がってください。
※次回は飯尾醸造のお酢を使った「冷製サワースープ」のご紹介。2020年4月29日(水)公開です!
飯尾醸造
京都府宮津市小田宿野373
電話 0772-25-0015(8:00~17:00)
FAX 0772-25-1414
https://www.iio-jozo.co.jp/
純米富士酢500㎖756円、富士酢プレミアム500㎖1512円ほか、商品はオンラインで取り寄せ可。月曜から土曜、蔵見学受け付けあり。見学時間は9:00~11:00、13:15~16:00 詳細はホームページまで。お申し込みは上記まで。
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