2020年4月24日

リモートワークのリラックスに 爽やかに香るみかんのスープ   【ファームスズキ 番外編】

スープ作家 有賀薫

ステイホームで一日家で働いている人へ、瀬戸内海の柑橘をたっぷり使った、爽やかに香るスープをご紹介。みかんの皮をむいているとたちまちにフレッシュな香りが広がります。スープをつくっているときもレモンやオレンジの香りにリラックス。爽やかな柑橘の香りに癒されると、息のつまった気分がちょっと晴れますよ。広島県大崎上島のファームスズキの番外編。隣接した有機栽培の柑橘農家を訪ねました。
【番外編 中原観光農園】

 文・有賀薫(スープ作家) 撮影・柿本礼子 編集・神吉佳奈子

島の自然の恵みを生かした
循環型の柑橘畑へ

esoup_nakahara02.jpg

ファームスズキの養殖池の隣に「無農薬で柑橘類を作っている農園がある」と聞きつけ、取材の合間に訪れました。向かったのは、2004年に有機JAS認証を取得。大崎上島で柑橘を栽培する中原観光農園。あちこちにたわわになっている柑橘をもいだら、その香りのいいこと! もぎだてのレモンやみかんを使って、スープをつくりました。

爽やかなライトミール
レモンとお米のスープ

esoup_nakahara03.jpg

リモートワーク中の小腹がすいたときにぴったり。卵と鶏肉のやさしいスープにレモンの酸味が加わり軽い食べ心地。少しお米が入っているので腹持ちもよし!

もともとのレシピは、ギリシャのスープです。チキンベースのブイヨンで米やパスタを煮て、卵とレモン汁を混ぜたレシピでポタージュ状になっていることが多いのですが、ここでは米をそのまま残して、たまご雑炊のようなスタイルで親しみのある仕上がりにしています。

コツは、卵とレモン汁にスープを混ぜるときに、少し冷まして少しずつ入れ、卵がぼそぼそにならないように煮ること。加熱の時も煮立てません。とはいえ、もし固まってしまってもそれはそれでおいしいです。気軽に楽しんでください。

▼ 材料(2人分)
鶏もも肉 150g(約1/2枚)
米 大さじ3
卵 2個
レモン汁 大さじ1
レモンの薄切り 2枚
チキンブイヨン 800㎖
塩 小さじ2/3
※チキンブイヨンは顆粒やキューブを湯に溶かしたものでもOKですが、塩分が入っているので塩を控えめにしましょう

▼つくり方

esoup_nakahara04.jpg


鶏肉を1~2㎝角に切る。鍋にチキンブイヨンをあたため、鶏肉と米を入れ、ひと煮立ちしたら弱火に。米が柔らかくなるまで20分ほど煮て、塩を加える。

esoup_nakahara05.jpg


ボウルに卵を入れ、泡立て器で泡立てるようによく混ぜる。泡立て器がない場合は、箸を数本束ねてよく混ぜる。

esoup_nakahara06.jpg


①のスープを少し冷ましてからお玉ですくって、少しずつ②の卵に加え、お玉2杯分ほどのばしてから鍋に戻す。味をみて塩で調える。

esoup_nakahara07.jpg


仕上げにレモン汁を加え、なめらかな仕上がりになるよう必ず弱火で温め(煮立てないように注意)、器に盛りレモンを飾る。

ビタミンたっぷりの
柑橘のミックススープ

esoup_nakahara08.jpg

柑橘の香りをミックスしたごちそうスープ。一口食べたときに広がる爽快感! ランチスープにつくってリフレッシュ。リラックスな家のみにはキリリと冷やした白ワインといっしょにどうぞ。

ジャムやコンポートほど甘くなく、柑橘をサッと煮ることでもっとたっぷり食べられないかと思い、淡い甘みで温めてみました。

柑橘にはミカン類、オレンジ類、ブンタン類、香酸柑橘類(レモンや柚子など香りや酸味を利用するもの)などさまざまな種類がありますが、いろいろなものがミックスされていると楽しい味わいに。合わない柑橘はないので、甘いもの、酸っぱいもの、香りの違うものを組み合わせてみましょう。

今回はデコポン、甘夏、はるかを使っています。好みの柑橘を3個選んで皮をむき、薄皮もむきます。鍋に果実を入れ、かぶるぐらいの水と砂糖を大さじ1~2入れて、弱火でゆっくり温めます。砂糖が溶けたら味を見て、甘さを確認します。柑橘の甘みの度合いで砂糖の量を好みに調節します。

じんわり温まるおやつ
みかん甘酒

esoup_nakahara09.jpg

家族で一日家で過ごす日のみんなのおやつにおすすめ。みかんのビタミンと甘酒の麹の力で栄養満点。じんわりとした甘みと酸味に癒されますよ。

最後にもう一品、甘酒の甘みをみかんの酸味でさわやかに引き締め、食べやすくした「みかん甘酒」。つくり方はいたって簡単。みかん1個は皮をむき、薄皮も丁寧にとります。ここに、麹の甘酒150㎖ほどを注いで、小鍋で軽く温めます。甘酒は弱火で、沸騰させすぎないように。温かいまま飲んでもおいしいですが、冷蔵庫で冷やしても、さわやかな飲みものになります。このままレンジで温めてもOKです。

中原観光農園の柑橘畑は、
絵本の中のようだった

esoup_nakahara10.jpg

二代目の中原幸太さん。柑橘栽培の傍ら、有機JAS認証オリーブ栽培も手掛け、一粒ずつ手で収穫し、即搾油したオリーブオイルも販売している。

中原観光農園を営む中原幸太さんは、30年前、中原さんの父親が農薬と化学肥料を一切使わない農法へと切り替えました。現在、レモン、みかん、はっさく、甘夏、デコポン、ネーブル......5ヘクタールの畑に、少量品種まで入れて15品種の柑橘類をつくっています。

作業しやすいように幅広の通路は、木のチップが敷き詰められて、フカフカと気持ちよい感触です。島で伐採された木材チップを5年熟成させて堆肥化しています。畑の片隅に積まれている黒い山のようなものは、椎茸栽培で使い終わった菌床ブロック。これも柑橘の堆肥にします。

中原観光農園の土壌は、車海老が育つファームスズキのため池の砂地と同じ。土を掘ると牡蠣殻が出てきます。これにチップや培養土など、山からいただいた栄養分を混ぜ込んでいるのです。島ならではの海と山のミネラルがたっぷり含んだ土壌で柑橘を栽培しています。

esoup_nakahara11.jpg

瀬戸内海の柑橘畑は山の斜面を利用した段々畑が多く、収穫作業はとてもハード。中原さんは、平地の畑を増やして、通路を幅広に区画。高齢者でも作業しやすいようにしている。

esoup_nakahara12.jpg

大崎上島の椎茸農場より運ばれた菌床ブロック。島の外から持ち込まない、島にあるもので土づくりをするのが中原さんのモットー。

柑橘畑に一歩入ると、深いグリーンの木々にレモンやオレンジの実がたわわについています。まるで絵本の風景のよう! レモンの実は木の内側になるとのことで、木の下に潜り込んでのぞきます。 取材時期は12月でしたが、レモンが完熟するのは1月にはいってからで、もいだレモンの青く固い実からは、スパイシーな香りがします。

esoup_nakahara13.jpg

樹齢19年のレモンの木。シーズンに1本当たり800個ほど収穫。

esoup_nakahara14.jpg

レモンの木の下にもぐって下から見上げると、一面がレモン、レモン、レモン!

収穫期前の甘夏やデコポン。その場で皮をむいてもらった果実を口にすると、まだ若いので酸味が前にくるものの、奥の方に強い甘みと旨味をすでにたたえています。ただ甘いだけでなく、それぞれが独自の個性を強烈に出しつつ成長していく。時間をかけてはぐくんできた畑が、食材にとっての正解を出している気がしました。中原さんの畑で育つみかんたちには、「多様性」という、今の時代に最も求められ、認められていくべきものがあった、そんな風に感じています。

esoup_nakahara15.jpg

esoup_nakahara02.jpg中原観光農園
広島県豊田郡大崎上島町木江5223-2
0846-62-0056
開園時間 9時~17時
入場料 大人500円、小人300円
申込は要予約
竹原港よりフェリーで25分、垂水港より車で1分

※本サイトに掲載の文章の部分的な引用を希望される場合は、サイト名・記事タイトル・著者を明記の上でご利用ください。また引用の範囲を超える文章の転載・写真の二次利用については編集部の許諾が必要です。

プロフィール
有賀薫(ありが・かおる)
受験生だった息子の朝食にスープを作りはじめたことをきっかけに、365日毎朝のスープをSNSに投稿。旬の野菜を使ったシンプルなレシピが反響を呼び、書籍化に。「スープ・レッスン」(プレジデント社)に続いて、『帰り遅いけどこんなスープなら作れそう』(分響社)などのレシピ本を手掛け、ライター業から転身。スープ作家として、実験イベント「スープ・ラボ」のほか、テレビや雑誌などで活躍の場を広げている。
有賀薫の記事一覧

最新記事

人気記事