2020年3月18日

ミラノ在住の日本人が見た、新型コロナの影響は?

フリーライター・本サイト編集担当 柿本礼子

新型コロナウィルスの感染がヨーロッパなどで急速に広まっている。イタリアではコンテ首相が3月8日にミラノを含む北部14の県を同日から4月3日まで封鎖すると発表(その後10日から、全土で不要な外出が禁止、12日からは食料品店や薬局などを除いてすべての商業活動を停止された。期限は3月25日)。いま、イタリアの生活はどうなっているか、ミラノ在住で、日本食材をイタリアに輸入する「JI Farm」の横澤一史さんにミラノの様子を聞いた。

317日現在、私が住むミラノでは、仕事上や健康上の理由、または日常品の買い物の理由以外に外出することを禁止されています。スーパーマーケットや薬局以外の商店は営業停止、バールやレストランなどの飲食店は全てデリバリーサービス以外営業停止です。マスクやアルコール消毒液などは手に入りづらい状況が続いており、非常事態であることを肌で感じています。

個人的な印象ですが、イタリアの報道がコロナウィルス一色になったのは、北イタリア広域で移動制限、休校などが発表された222日からだと思います。それまでは若い人が集まるナヴィリオ地区やブレラ地区ではまだ賑わいがありました。TV番組では外でアペリティーヴォを楽しんでいる若い人達に対しインタビューを行い「家で何をしろって言うんだ?誰も俺たちの自由を奪うことはできないぜぇ!」という類の発言を面白おかしく報道していました。

ただ「ロンバルディア州全体と北イタリア14県が封鎖される」という38日の政令、310日の「北イタリアでの措置をイタリア全土で適用する」という政令、そして12日の「イタリア全土全ての飲食店や店舗の営業を停止する」という政令が発表されてからは、人々の間に恐怖が芽生え、外出する人が激減し、日常生活ではなくなった印象です。

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3月10日撮影。ガレリアやドゥオーモにほとんど人がいない。

感染者や死者の数は急激に増え続けており、感染のピークはまだまだ先になると思われることから、メディアは連日「State a casa!(家にいて下さい!)Non uscite di casa! 外出しないで下さい!」と強く言い続けています。CMの合間に「コロナウィルスに感染しないためにすべきこと」という映像も頻繁に流されています。「過熱気味の報道が経済活動に悪影響を与える!」いう人もいなくなりました。ちょうど東日本大震災のときの日本のメディアを彷彿とさせます。

ただ、こんな状況でもイタリアでは素晴らしいことが起こっています。

コンテ首相の会見の言葉「IoRestoaCasa私は家にいます」はハッシュタグとなり、広く使われるようになり、「Andrà tutto beneきっと全てうまくいくよ」という言葉を添えた虹の絵をバルコニーに掲げる活動は人々の心に安らぎを与え、国民を一致団結させています。

313日、18時に家にいる人達が一斉にバルコニーに出て、音楽を奏でるというフラッシュモブが行われました。人々はギターを演奏し、トランペットを吹き、スピーカーで大音量の音楽を流し、楽器を持っていない人達はフライパンや鍋で大きな音を鳴らし、国家を歌っていました。

315日には21時に各家庭が部屋の電気を一斉に消して、懐中電灯でイルミネーションを行いました。

TV番組でタレントがやるのではなく、一般の人達がみんなで一緒に行動するというところが日本ではなかなか見られないことですし、心を打たれます。

社会的なルールをあまり守らず、自由に活動することが多いイタリア人が、逆境を迎え一致団結したときのパワーは素晴らしく、日本人として羨ましくもあります。「きっと彼らはこの問題を乗り越えていくんだろうな」と思わせてくれます。シリアスに問題をとらえることも大事ですが、非常事態でも明るく振舞う重要さを教えてもらっている気がします。

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プロフィール
柿本礼子(かきもと・れいこ)
「エシカルはおいしい‼」エディター。「食」を社会的に捉えたいと、食ライターへ。各地の農産品を料理人や食べ手につなぐこと、食関連の編集・執筆が目下の仕事。料理専門誌、新聞での執筆のほか、『ヴィーガン・レシピ』(米澤文雄著・柴田書店)、『ヨーロッパのスープ料理』(誠文堂新光社)など料理書籍の編集も行う。出張先で出会う食材や郷土食が何よりの楽しみ。
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