2020年2月25日

これが塩田跡で育てた海の味 牡蠣の潮汁【ファームスズキ 第3回(牡蠣レシピ編)】

スープ作家 有賀薫

水揚げしたばかりの牡蠣の殻をむいてもらって口にしたら、甘い! 思わず声がでるほど。甘みは口の中ですーっと消えて、旨味の余韻がじーんと広がります。だから手は加えず、剥きたての牡蠣を湯に浮かべるだけ。塩で味をととのえ、オリーブオイルをたらしたら、もうそれだけで十分! 

文・有賀薫(スープ作家) 撮影・柿本礼子 編集・神吉佳奈子

牡蠣の70~80%が海水。
だから、牡蠣の味は海の味

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ファームスズキの清らかさの中に品のよい甘さを持つ小ぶりの牡蠣は、生で食べるのが断然おいしい! 逆に、加熱すると小さいだけに、水分が逃げてしまいます。ここまでスープを作りに来て、作らないというのもどうか...と思いつつ、ファームスズキの、もうひとつの牡蠣に目が行きました。

加熱して食べたい人向けに育てている三倍体の大粒の牡蠣。小粒と環境は同じで育っているので、もちろん生でも食べられます。池の水を抜いている間は海へ運ばれ、海の中で1年以上、さらに養殖池の冷たい地下海水で1か月以上育っています。ぷっくりと大粒の牡蠣、これなら加熱してもおいしさが逃げてしまうことはなさそうです。

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左がファームスズキの看板商品「クレールオイスター(塩田熟成牡蠣)」、右の大ぶりの牡蠣が三倍体の大粒。

流通している生食用の牡蠣は、菌のリスクのない沿岸から離れた場所で獲れるもので、旨味にやや欠けます。一方加熱用の牡蠣はしっかり熱が通るまで加熱することが推奨されているため、さっと火を通すという食べ方に向きません。でも、この牡蠣なら中があたたまるギリギリの感じで引き上げるのがおいしいはずです。

シンプルイズベスト
牡蠣の潮汁

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殻から出したばかりのみずみずしい牡蠣を、静かにそっと火を入れるだけ。牡蠣が蓄えた海水のミネラルがだしとなり、静かな余韻にしびれる一皿。牡蠣はレアくらいの火入れがちょうどいい。

▼材料(4人分)

殻付きの牡蠣12個
水 500㎖
塩 適量
オリーブオイル 少量


▼作り方
1.牡蠣の殻をむく

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牡蠣の貝柱だけを殻から切り離してやれば、簡単に外れます。貝柱の位置を確認します。殻のふくらみの方を下に手のひらに置き、蝶番を手前にすると、右上あたりに牡蠣の貝柱がついています。ここに牡蠣ナイフをぐいっと差し込みます。牡蠣はぴったり口を閉じてはいますが、1点だけナイフの先が入れば、そこからこじ開けるのはそれほどむずかしくありません。1、2個やるだけでコツはつかめます。牡蠣の殻のかけらなどがついてしまうので、さっと水洗いします。

2. 湯に牡蠣をそっと入れる。

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湯を沸かして塩味をつけます。そこに牡蠣をひとつずつそっと入れていくだけ。ひとつ入れたら、1分半から2分ほど。ゆで過ぎを防ぐため、引き上げてしまいます。汁の味見をして塩で整えたら、器に牡蠣を並べ、熱々の汁を張って、オリーブオイルをたらします。食べるときに、レモンをほんの少し絞るのも素敵ですし、無農薬のレモンを皮だけを少し削ってのせて、香りだけを移してもよいものです。

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ルキーで濃厚な牡蠣とは一線を画す、つるんとのど越しのある、みずみずしさは塩田熟成牡蠣ならでは。

ふつうの加熱用の牡蠣の場合、安全を考えると身の中心部の温度を85℃以上で90秒以上保つ必要があります。中心が85度に上げるのには5分以上かかってしまいますが、実際に加熱しすぎると身が固くなってしまします。では生食用の牡蠣で...となると、今度は旨味が足りず、スープが物足りなくなります。生食もできる、でも味わいのしっかりしたファームスズキの牡蠣ならではの、食べ方なのです。

PC192038.jpgファームスズキ
広島県豊田郡大崎上島町東野垂水37-2
https://www.farmsuzuki.jp/
オンラインストアで取り寄せ可。活牡蠣の販売は3月末、活車海老は2月末まで。シーズンオフは、最先端の冷凍技術による瞬間凍結が一年中購入できる。「クレールオイスター(塩田熟成牡蠣)」12個4600円~、大粒12個4800円~。「塩田育ちの活車海老」350g(14~19尾)5500円~。いずれも内税・送料別。2019年、竹原港に併設された「たけはら海の駅」に直営のレストランをオープン。

FARM SUZUKI BAYSIDE KITCHEN TAKEHARA PORT
広島県竹原市港町4-2-24 たけはら海の駅 3階
お問い合わせ:info@farmsuzuki.jp
営業時間 : 11:00〜15:00(L.O.14:30)
※夜は予約制で10名から。1階に販売コーナーあり。
定休日: 水曜日・第3火曜日  不定休あり

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プロフィール
有賀薫(ありが・かおる)
受験生だった息子の朝食にスープを作りはじめたことをきっかけに、365日毎朝のスープをSNSに投稿。旬の野菜を使ったシンプルなレシピが反響を呼び、書籍化に。「スープ・レッスン」(プレジデント社)に続いて、『帰り遅いけどこんなスープなら作れそう』(分響社)などのレシピ本を手掛け、ライター業から転身。スープ作家として、実験イベント「スープ・ラボ」のほか、テレビや雑誌などで活躍の場を広げている。
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