2020年1月 7日

何をすれば「エシカル」?

英国エシカルコンシューマー主筆 ロブ・ハリスン

長らくお待たせしました! ロブからの手紙を送ります。
日本ではまだ、なじみの薄い「エシカル」という言葉を知るために。
イギリスのマンチェスターで1989年に雑誌Ethical Consumerを創刊し、さまざまな商品・サービス・企業について独自の調査に基づく「エシカル度」を数値化し、評価してきたロブ・ハリスンさんに聞きました。
2回目は何をすれば「エシカル」になるのか? というお話です。

ものごとをエシカルにしたいとき、
私たちに何ができるだろう?

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「エシカル・コンシューマー」が入る建物。環境活動などを行うNPO等が多数入居している。

かつてーー自分たちが購入している商品がエシカルではない方法で製造されているのではないかと人々が気がつき始めた頃ーー人々は政府の介入を求めたり、再発防止の法整備を要求したりしていました。例えばイギリスでは、1842年に10歳以下の子供が炭鉱で労働することを禁止する法律が締結されました。以降、似たような法律が他の国々でも見られるようになりました。しかし今からすれば、当時は11歳で働いてもいいと考えられていたなんて...全くおかしな話です!

1950年代から世界貿易市場が急速に拡大し、かつてはシンプルだった問題が複雑化していきました。例えば2007年、インドのビハール州とジャールカンド州のおよそ2万人の子供たちが雲母鉱山で働いていたことが明らかになりました。雲母は、世界中で化粧品や光沢のある自動車の塗料に使われる鉱石です。

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雲母の採鉱ーーオランダのキャンペーン団体SOMOの2016年レポートより

残念ながら、イギリスやドイツ、日本の政府にはインドの児童労働を禁ずる強制力はありません。製品や原料が世界規模で取引される一方で、人々は団結して問題解決の糸口を見つけなければならなくなりました。「エシカルな消費」はこうした問題を解決するとき、キーポイントとなるのです。

王道のアプローチとしては、最低限の基準を作り、その基準に適合する商品にエシカル・ラベルを付け、消費者にエシカル・ラベルがついた商品を選択するよう説得することです。雲母の事例もまた、2017年に運動家と企業の双方によって"Responsible Mica Initiative(責任ある雲母イニシアチブ)"が発足しました。

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エシカル・スタンダードへの合意

こうしたアプローチの問題は、まず何が正しいエシカル基準なのかということをグローバルな規模で合意しなければならないことです。私の最初の手紙では、何がエシカルで何がそうでないのかについて、必ずしも全員が合意したわけではないと書きましたね。

ですが、意見の相違があるとはいえ、調査を進めるうちに、製造会社の倫理についての核心的部分については、下記の項目は共通してあることが見えてきました。

(a) 環境持続性
多くの人々は、次世代が生き残れないほどの自然環境の破壊はよくないと考えています。

(b)人権
多くの人々は、1948年に国連によって採択された世界人権宣言(苦役や拷問からの解放など)で掲げられている権利について賛同しています。

国際的には、国連は現在17の持続可能な開発目標について合意しており、多くの多国籍大企業はこの目標についての報告書を公開しています。ここでは詳しく説明しませんが、いくつかの主だったエシカル・バリュー(=倫理的に正しいと思う価値観)については、より詳細なコンセンサスが出てきているようです。

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日本語版はこちら

エシカル・ラベルが意味すること

近代西欧諸国での消費者問題の1つは、市場がよりエシカルになるような基準を模索することで解決しました。2018年8月には国際的なウェブサイトの「ecolabelindex.org」が、199か国25産業部門について463個のエコラベルを掲載しました。

問題はエシカル・ラベルの質がバラバラなことです。独自に思いついたエシカル・ロゴやラベルであれば、誰の了解を得ることなくパッケージに貼れてしまいます。一方でフェアトレード・ラベルのように、透明性があり効果的な審査基準なものは、国際的にも有効で、市民団体が支持できるエシカル・ラベルといえるでしょう。つまりエシカル・ロゴは、完全なグリーンウォッシュ(環境配慮しているように装いごまかすこと)にもなりうるし、グローバルな認証ラベルにまで成長することもあるわけです。

良いエシカル・ラベルは、市民団体や企業などの「マルチステークホルダー」の協働で作られるのが一般的です。あなたが信頼する団体やキャンペーンまたはチャリティー団体が関与しているエシカル・ラベルがベストですね。

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RSPO=Roundtable on Sustainable Palm Oil(持続可能なパーム油のための円卓会議)のラベルは、イギリスでも話題だ。

多様な環境への主張を理解する

環境問題に配慮した製品について決断を下すのは、そう簡単なことではありません。例えば2つしかない製品のうち、1つは気候変動に良い影響があり、もう1つは環境汚染の影響がより少ない、といった場合、どちらを選べばいいでしょう?

倫理的に、どちらが環境にとって正しい答えか、という難題への答えはありません(それを買わないこと以外で)。この場合は、どちらがあなたにとってより重要であるか、もしくはどちらが先に解決されるべき問題とあなたが考えるかによってのみ、答えが導き出されるのです。言い方を変えれば、あなたが政治的に何を優先するかということです。

こうした問題はしばしばオーガニック・フードの支持者を悩ませます。例えば「地元でとれた産物を買う」のが良いか(輸送時の二酸化炭素排出量がより少ないから)、「認証マークつきの輸入オーガニック・フードを買う」のが良いか(殺虫剤の使用がより少ないから)などですね。これはエシカル消費をする際も、環境問題を考える際にも問題になってきます。多様な主張があり、それぞれの主張に詳細な情報があるでしょう。

なにか解決方法があるとすれば、あなたが信頼するジャーナリストの記事を読むことでしょう。例えばイギリスの「Ethical Consumer」(私の記事)や、あなたがまさに今読んでいる「エシカルはおいしい!!」などをね。

2018年8月2日寄稿
翻訳:上原尚子

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プロフィール
ロブ・ハリスン(ロブ・ハリスン)
エシカルコンシューマー・リサーチアソシエーション 代表
Ethical Consumer Research Association(ECRA)
イギリスのマンチェスターで1989年に雑誌Ethical Consumerを創刊。さまざまな商品・サービス・企業について独自の調査に基づくEthic Soreという尺度でエシカル度を数値化し、評価してきた。オンライン主体のメディアとなった現在も同誌の主筆を務めつつ、エシカル度の向上に取り組む企業へのコンサルティングや、国際的NGO、または複数の政府機関の顧問を務める。
エシカル先進国であるイギリスにおいても、その発言が重要視されるキーパーソンである。著書として「The Ethical Consumer」Rob Harrison(編著)
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