
有賀さんが次に向かったのは、
たわわに実った久松農園のピーマン畑。
「野菜をリッチに(つまり大量に)、多様に使えば、
シンプルな野菜料理がもっとおいしくなる」
と教えてくれた久松さんのことばから、
ピーマンのスープレシピが生まれました。
文・有賀薫(スープ作家) 撮影・山本謙治 編集・神吉佳奈子
野菜の本当の
旬って何だろう
農園を訪ねる前に取り寄せて食べて驚いた、ピーマンの畑にやってきました。ピーマンでスープを作ろうと思いますと伝えた私に、久松さんは「ピーマンの小さいのや、甘長とうがらしを混ぜるとぐっとおいしくなるよ」と教えてくれました。普段私たちは大きさが揃い、袋に入ったピーマンを買います。でも畑のピーマンには、当然ながらさまざまな生育具合のものがなっているわけです。
「未熟のものは苦みやえぐみがあって、大きくなるにつれて甘くて、旨味が出る」と、サイズ違いのピーマンをハサミで収穫。齧ってみると、熟していくにつれて旨味になっていくのがわかります。とはいえ、苦みがない均一な野菜がいいわけではなく、「味の構成要素が多くて複雑な料理を、シンプルなのにおいしいと感じます」と久松さんは言います。
ネギの畑では「根っこごとまるごと食べる」ということを。そしてこのピーマンの畑では「多様なものを食べる」ことを教わりました。スーパーで野菜を買っていると、当たり前のことをつい忘れてしまうのです。
自然のものを自然に食べる
不揃いのスープが生まれた
いつもはピーマンだけで作るスープを、いろいろとり合わせるとどうなるか。ピーマンの大小、またピーマンをルーツにもつ甘長とうがらしが混ざった賑やかな旨味。緑一色で、見た目は少々地味ですが、ちっとも食べ飽きず、味わい深く、自然はもともと不揃いなものなのだと感じられるスープになりました。
通常の家庭で未熟のピーマンを使うというようなことはできないでしょう。でも少し種類の違うものを入れてみる、完熟の赤ピーマンを加えてみるなど、工夫はできます。ぜひやってみてほしいアイデアです。
種もヘタもまるごと食べる
焼きピーマンのスープ
▼材料(2人分)
ピーマン、ししとう(甘長とうがらし) 合わせて150~200g
オリーブオイル 大さじ1
昆布 5㎝
塩、醤油 各適量
▼作り方
1)ピーマンやシシトウをつぶす
ピーマン、甘長とうがらし(ししとう)など、とり混ぜるとおいしさに幅が出ます。この日は畑で摘んだ、小さなピーマンも加えました。家庭では、ピーマンだけでも作れます。大きなピーマンは、手でつぶしてワイルドに割ります。甘長とうがらしは、破裂しないよう切り込みを少しいれて。採れたてならば、種やヘタは取り除かず全部使いましょう。
2)焼き目をつけて焼く
少し深めのフライパンが適しています。オリーブオイルを熱し、ピーマンと甘長とうがらしを全部入れたら、しばらくそのまま動かさずに。焦げ目が旨味にかわるので、しっかり焦げ目がついたらひっくりかえして裏も焼きます。もうここまででおいしそう!
3)昆布水をつくる
ピーマンに先だって、昆布を水につけておきます。5センチに対して1リットルぐらい。水だしの昆布は、昆布臭が少なく、すっきりした味わいになるのが特長です。ポットに入れておくといつでも使えます。
4)昆布水を注ぎ、調味する
焼いたピーマンと甘長とうがらしに、昆布だしを加えます。煮立ったら、塩とほんの少しの醤油を加えて味を見て、できあがり。

http://hisamatsufarm.com/
●定期便はSサイズ2000円、Mサイズ2500円、Lサイズ3000円(送料別)。単発のお試しセットもあり。そのほかにんじんジュース、トマトジュースも人気。トマトジュースは、旨味の強いクッキング用の品種を使い、農園で一番おいしい時期の完熟トマトだけでつくる。注文はインターネットのみ。電話やファックスの受付はしていない。
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