2019年11月29日

不揃いのおいしさを見つけた 焼きピーマンのスープ【久松農園 第2回】

スープ作家 有賀薫

有賀さんが次に向かったのは、
たわわに実った久松農園のピーマン畑。
「野菜をリッチに(つまり大量に)、多様に使えば、
シンプルな野菜料理がもっとおいしくなる」
と教えてくれた久松さんのことばから、
ピーマンのスープレシピが生まれました。

文・有賀薫(スープ作家) 撮影・山本謙治 編集・神吉佳奈子

【久松農園 第1回はこちら】

esoup_h2_2.jpg

8月、最盛期のピーマン畑に立つ農園主の久松さんと有賀さん。現在300軒ほどの産直取引のうちの3割が首都圏の飲食店。畑へ通う料理人たちとのコミュニケーションから食べ方のヒントを見つけては、SNSでレシピも発信している。

野菜の本当の
旬って何だろう

農園を訪ねる前に取り寄せて食べて驚いた、ピーマンの畑にやってきました。ピーマンでスープを作ろうと思いますと伝えた私に、久松さんは「ピーマンの小さいのや、甘長とうがらしを混ぜるとぐっとおいしくなるよ」と教えてくれました。普段私たちは大きさが揃い、袋に入ったピーマンを買います。でも畑のピーマンには、当然ながらさまざまな生育具合のものがなっているわけです。

esoup_h2_3.jpg

左のピーマンは果肉が厚く歯切れのよい「とんがりパワー」、右は皮が薄く、甘味や旨味が強い「京ひかり」。品種の違いで果肉の厚みがまるで違う。「生食に向くのがとんがりパワーで、スープにするなら京ひかり」と久松さん。

「未熟のものは苦みやえぐみがあって、大きくなるにつれて甘くて、旨味が出る」と、サイズ違いのピーマンをハサミで収穫。齧ってみると、熟していくにつれて旨味になっていくのがわかります。とはいえ、苦みがない均一な野菜がいいわけではなく、「味の構成要素が多くて複雑な料理を、シンプルなのにおいしいと感じます」と久松さんは言います。

ネギの畑では「根っこごとまるごと食べる」ということを。そしてこのピーマンの畑では「多様なものを食べる」ことを教わりました。スーパーで野菜を買っていると、当たり前のことをつい忘れてしまうのです。

自然のものを自然に食べる
不揃いのスープが生まれた


esoup_h2_4.jpg

〝飽きのこないおいしさ″は、多様な品種による味の複雑さと時間軸のばらつきではないか。そんな久松さんの提案から、異なったサイズや品種を使うスープレシピの新しい発想が生まれた。

いつもはピーマンだけで作るスープを、いろいろとり合わせるとどうなるか。ピーマンの大小、またピーマンをルーツにもつ甘長とうがらしが混ざった賑やかな旨味。緑一色で、見た目は少々地味ですが、ちっとも食べ飽きず、味わい深く、自然はもともと不揃いなものなのだと感じられるスープになりました。

通常の家庭で未熟のピーマンを使うというようなことはできないでしょう。でも少し種類の違うものを入れてみる、完熟の赤ピーマンを加えてみるなど、工夫はできます。ぜひやってみてほしいアイデアです。

種もヘタもまるごと食べる
焼きピーマンのスープ


esoup_h2_5.jpg

だしを含んだピーマンの果汁がじゅわっと広がり、苦みや甘み、旨味が次々に押し寄せる。究極にシンプルなレシピだが、サイズ違いや品種違いを混ぜて大量に使うことでリッチなスープに。ピーマン3個がぺろり!

▼材料(2人分)
ピーマン、ししとう(甘長とうがらし) 合わせて150~200g
オリーブオイル 大さじ1
昆布 5㎝
塩、醤油 各適量

▼作り方
1)ピーマンやシシトウをつぶす

esoup_h2_6.jpg

ピーマン、甘長とうがらし(ししとう)など、とり混ぜるとおいしさに幅が出ます。この日は畑で摘んだ、小さなピーマンも加えました。家庭では、ピーマンだけでも作れます。大きなピーマンは、手でつぶしてワイルドに割ります。甘長とうがらしは、破裂しないよう切り込みを少しいれて。採れたてならば、種やヘタは取り除かず全部使いましょう。

2)焼き目をつけて焼く

esoup_h2_7.jpg

少し深めのフライパンが適しています。オリーブオイルを熱し、ピーマンと甘長とうがらしを全部入れたら、しばらくそのまま動かさずに。焦げ目が旨味にかわるので、しっかり焦げ目がついたらひっくりかえして裏も焼きます。もうここまででおいしそう!

3)昆布水をつくる

esoup_h2_8.jpg

ピーマンに先だって、昆布を水につけておきます。5センチに対して1リットルぐらい。水だしの昆布は、昆布臭が少なく、すっきりした味わいになるのが特長です。ポットに入れておくといつでも使えます。

4)昆布水を注ぎ、調味する

esoup_h2_9.jpg

焼いたピーマンと甘長とうがらしに、昆布だしを加えます。煮立ったら、塩とほんの少しの醤油を加えて味を見て、できあがり。

esoup_h2_10.jpg

有機野菜の求道者である久松さんと、スープの求道者である有賀さんが意気投合して生まれたコラボスープ。「うちのピーマン、おいしいねえ」と思わず笑顔に。

【久松農園 第3回につづく】

久松農園
http://hisamatsufarm.com/
●定期便はSサイズ2000円、Mサイズ2500円、Lサイズ3000円(送料別)。単発のお試しセットもあり。そのほかにんじんジュース、トマトジュースも人気。トマトジュースは、旨味の強いクッキング用の品種を使い、農園で一番おいしい時期の完熟トマトだけでつくる。注文はインターネットのみ。電話やファックスの受付はしていない。

プロフィール
有賀薫(ありが・かおる)
受験生だった息子の朝食にスープを作りはじめたことをきっかけに、365日毎朝のスープをSNSに投稿。旬の野菜を使ったシンプルなレシピが反響を呼び、書籍化に。「スープ・レッスン」(プレジデント社)に続いて、『帰り遅いけどこんなスープなら作れそう』(分響社)などのレシピ本を手掛け、ライター業から転身。スープ作家として、実験イベント「スープ・ラボ」のほか、テレビや雑誌などで活躍の場を広げている。
有賀薫の記事一覧

最新記事

人気記事