
スープ作家の有賀薫さんが磯沼牧場で
出会ったしあわせな母さん牛。
ジャージー牛一頭分のミルクだけで
つくったヨーグルトは、
磯沼さんのかあさん牛への愛情が
たっぷりつまっていました。
文・有賀薫(スープ作家) 撮影・柿本礼子 編集・神吉佳奈子
【磯沼牧場 第2回はこちら】
ひとりひとりが違うように
牛にだって個性がある
磯沼ミルクファームには、ジャージー種の牛乳だけで作った「プレミアムヨーグルト」があります。瓶のふたを開けると、クリーム色の脂肪分が、まるで中ぶたのように固まっているのに驚きます。触ってみると冷えたバターのような感じ。ナイフでとって、パンに塗って食べてみると、クロテッドクリームにも似た濃厚なクリームです。
これは、ヨーグルトがホモジナイズされていない(ノンホモジナイズ)ことによるもの。磯沼ミルクファームではこのホモジナイズを行わず、生乳に乳酸菌を加えるだけの最もシンプルかつ自然な製法で、ヨーグルトに生乳のおいしさをそのまま残すことを選んでいます。
ノンホモナイズ......
ホモジナイズとは「均一化」。しぼりたての生乳はそのまま置くと、通常脂肪分が分離しクリームが浮いてくる。見た目と口当たりが悪くなるので、流通しているほとんどのヨーグルトは生乳に圧力をかけ、脂肪球を細かく砕いて均一にしている。
ヨーグルトに使われているのは、濃厚さが特徴のジャージー牛のミルクです。でも実はそれだけではありません。このヨーグルト、蓋を見ると牛の名前が印刷されているんです。ヨーグルトを作るためのミルクを1頭の牛に限定しているという、文字通り、かあさん牛のヨーグルト! ヨーグルトの質感や甘味、酸味に牛の個体による微妙な違いが出るそうです。クリームの硬さの違いや甘味、酸味の違いがあります。こんなヨーグルトはどこを探してもありません。牧場の牛たちと出会ったあとは、なおさらおいしく感じるのでした。
鶏肉の野菜煮込みに
ヨーグルトをのせるだけ
このヨーグルトで作ったのは、鶏肉とトマトをベースにし、季節野菜を入れて煮込んだ、シチューのようなスープです。具として加えた野菜は夏野菜の代表、なす。色が悪くならないよう皮をむき、炒めてから煮込みます。
普段は塩と胡椒だけで仕上げますが、ヨーグルトを入れるスープにはスパイシーさが似合うと思い、クミンを使いました。異国情緒漂うスープがヨーグルトのトッピングで、軽やかに、それでいてうまみの深まる一皿となりました。
かあさん牛に会いに
磯沼牧場へ行こう
ストレスなく健康に牛を育て、そこから獲れたミルクを、なるべくありのままのかたちで消費者まで届ける。おいしい牛乳を飲んだり料理に使ったりして、私たち消費者もまた健康に幸せになる。磯沼牧場で一日過ごしてスープを作って、わずかな時間でしたが幸せの連鎖に参加させてもらった気分でした。
チキンとトマト、
なすのヨーグルトスープ
▼材料(2人分)
鶏もも肉 300 g
トマト 大2個(600g)
なす 2本
たまねぎ 1/4個
塩小さじ1
クミンシード 小さじ1
オリーブ油 大さじ2
ヨーグルト 大さじ1
ブイヨン 400mL
▼作り方
- 鶏肉は食べやすい大きさにカットする。玉ねぎはみじん切り。トマトはへたをとりざく切り。なすは皮をむいて、コロコロにカットする。
- 鍋にオリーブ油大さじ1を入れ、なすを炒めて取り出す。続いてオリーブオイル大さじ1/2で鶏肉を炒め、取り出す。残りのオリーブ油でたまねぎ、塩小さじ1/2を入れて炒め、クミンシードも入れて炒める。
- 鶏肉、トマトを合わせ、ブイヨン400mLと塩小さじ1/2を加えてよく煮込み、塩で味を調節する。盛り付けるときに、ヨーグルトをトッピングする。

東京都八王子市小比企町1625
TEL:042-637-6086
京王高尾線山田駅から徒歩10分
http://isonuma-farm.com/
※毎週日曜日は牧場案内ツアーと牛乳の試飲付き乳搾り(700円)体験教室を開催(要予約)。週末は、ハムやチーズ作り、バーベキューなど、都会の牧場ライフを楽しむ参加型イベントを企画している。売店では、牛乳やヨーグルトのほか、アイスクリームも販売。
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