2019年9月14日

CATs Clean upに行ってきました

環境コンサルタント 荒井里沙

エシカルに興味があるミレニアム世代は、どんな世界を見ているのでしょう? 環境コンサルタントでサステナブルレストラン協会の日本事務局もつとめるリサが、20代の「クール」を伝える連載がスタートします。本編第1回は、原宿キャットストリートの取り組みと、パンの耳から作られるビールのこと。

CATs Clean upに行ってきました

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工事現場の溝がごみ箱化していました。穴に何かいれたくなるのは、人の心理でしょうか。

日本のポイ捨てごみは、みょうに礼儀正しい。

いちおう火を消そうとしてるのか、排水溝に捨てられるたばこの吸い殻。「ごみはごみ箱に」の標語のとおり、自販機横のごみ箱からあふれるペットボトル。生け垣のなかに隠すように投げ捨てられた、コーヒーのスチール缶。

そんな捨て方をするのは、ポイ捨てに対する罪の意識があるからだろうな。

それって何気に、倫理的には先進的。だけど、仕上がりはどうにもかっこ悪い。そんな一工夫されると、ごみも拾いづらいのです。

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今回は総勢30名くらい。たくさんの人が参加してました。

渋谷と原宿をむすぶ、キャットストリート。

そこで行われる、"CATs Cleanup" に参加してきました。CATs Cleanupは、渋谷と原宿をむすぶキャットストリートを、近くのお店のスタッフや有志の人できれいにしよう、という活動です。

土曜日の朝9時、集合場所の"Burton Store"に向かいます。お店の前には、いけてるお兄さんお姉さんたちがが30人ほど。この辺りのお店で働く人が大半です。おしゃれなアパレルやコスメのお店が目白押しのキャットストリート、働いている人もみんなかっこいいのです。

排水溝に入り込んだタバコの吸い殻、と、いろんな形のトング。

さて、ごみ拾い開始。

ゆるく集まったみなさんと、会話を楽しみながら、使い慣れないトングを操ってごみを拾います。アパレル店員然としているCATsのみなさんと「ごみ拾い」という組み合わせに少し戸惑ったような、道行く人の視線。果たして、イケてるお兄さんお姉さんとごみ拾いはミスマッチでしょうか?いいえ、むしろかっこいいと思います。

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吸い殻。たばこのフィルター部分はプラスチックでできていて、いつまでも分解されません。

キャットストリートで見つけられる主なごみは、たばこの吸い殻やビールの空き缶、お菓子の袋。中にはプロテインの空容器など大きいものも。最近だと若者に大人気のタピオカのカップが、物悲しく自動販売機横のごみ箱に積み上げられています。

食べ歩きや飲み歩きは、手軽に食を楽しめるし、インスタ映えもする。みんなが夢中になるのもわかります。でも、立派なプラスチック容器の寿命は、せいぜい30分。食べたり飲んだりした後は、「もういらない」ものになってしまいます。

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「ポイ捨て禁止」といっても、ざんねんながら抑止力にはなりません。もっと工夫をしないと。

そうした「ごみ」を、その辺の生垣や、同じ飲料容器のごみ箱に捨てたくなっちゃう気持ち、わからなくはないです。でも、残念ながらそのごみは自然分解したりしないもので、誰かが拾って正しい処分ルートに乗せる必要があるのです。

皆がみんな倫理的に優れた規範人にならなくても、「このごみはポイ捨てしちゃったらどうなるのかな?」と少し想像力を働かせることさえできれば。キャットストリートの景観も、自然ときれいになっていくのかもしれません。

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ごみ拾いの後は、キャットストリートのカフェ The Roasteryのアイスコーヒー。マイカップでいただきます。

今回が66回目、初めてもう6年目になるこの活動。特有の心地よいゆるさは、きっと今までの継続のたまもの。

「ボランティアっす!」でも、「ごみ拾いしにきましたぁ!」でもなく。第3土曜日だ〜。みんなでごみ拾お~っ。ていうノリ。何なら、みんなとおしゃべりしに来たよ、コーヒー飲みに来たよ、っていう、そんな空気感。

ごみ拾いっていうのは、路上のごみを無くしてなんぼだと思っていました。でも、CATs Cleanupは、きれいにすることだけが目標じゃありません。ごみ拾いは、あくまでコミュニケーションツールの一種なのです。

「僕たちがやってるのは、ごみを拾うことじゃなくて、まちを良くすること」
主催の中村元気さんのことば。たしかに、目的はそこにあるはずですよね。

「0 waste=ごみゼロ」を目指す"530week"という団体でも活動している中村さんは、"L'Effervescence"のシェフ・生江史伸さんと長野のビール醸造所・AJB(Anglo Japanese Brewing )とのコラボレーションで、今年6月に「bread beer」なるビールをリリースしました。

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このビールの特徴は、名前のとおり原材料に「パン」が含まれているいうところ。生江さんが運営する六本木のベーカリーカフェ「bricolage bread & co.」の定番商品の「カンパーニュ」の耳の部分を使用し醸造されています。

bread beerは、食の楽しさを媒介ごみの概念を変えてくれます。今はごみと見なされているものも、視点を変えれば立派な資源に変わる可能性があるのです。それは食にかかわらず、古着のリユースや機械のリサイクルなどにおいても同じこと。

パンからできたビールって、どんな味?気になるあなたは、ぜひイベントや「bricolage bread & co.」のお店で味わってみてください。

地域を少しずつよくする取り組み。それは、美味しいビールを飲むことからでも始められます。

取材協力:CATs、530week
CATsについて: https://www.facebook.com/CATstreetCATs/

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プロフィール
荒井里沙(あらい・りさ)
環境コンサルタントののち、現在オランダにてサステナビリティの勉強中。食に興味があり、こだわって作られた食材や美味しい料理には目がない。趣味は旅とフラメンコ。
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