「おいしいチーズを余すところなく食べて、MOTTAINAIをなくそう!」そんな連載が、この【なくそう!チーズの食品ロス】です。日本でも比較的なじみのあるチーズを、毎回テーマに取り上げてお伝えしています。
第2弾のテーマは「モッツァレラ」。サラダやピッツァなどで日本でもすっかりおなじみとなったチーズですが、意外と知らないこともあるはず。モッツァレラの基本や保存術について、この前編ではご紹介します。
Q1. モッツァレラは牛乳製?水牛乳製?
モッツァレラの本家本元は、水牛のミルクでつくられる「Mozzarella di Bufala Campana(モッツァレラ・ディ・ブーファラ・カンパーナ)」。ナポリがあるイタリア南西部のカンパーニア州がモッツァレラの故郷で、原産地名称保護(D.O.P.)で認定されているチーズです。
では、牛乳製のモッツァレラはマガイモノ??いえいえ、そんなことはありません。
D.O.P.のものは確かに「水牛乳からつくられること」が必須ですが、イタリアでも牛乳製のモッツァレラはたくさんつくられていて、「Fior di Latte(ミルクの花)のモッツァレラ」なんていう、素敵な呼び方もあるほどです。
日本では、大手乳業メーカーも牛乳製のモッツァレラをつくっているので、スーパーでも気軽に買えますし、手づくりのモッツァレラをつくる日本のチーズ工房も増えています。
水牛のミルクは、牛のミルクと比べると脂肪分が多くて濃厚。でも、搾乳量が少ないことや大規模で飼育するのが難しいこともあり、現地でもとても貴重。当然、牛乳製のものと比べると、水牛乳のモッツァレラはお高めになります。
ナポリ近郊では、ボウルを持って"ごひいき"の工房に出来たてのモッツァレラを買いに行くということも未だにあるそう。まるで"豆腐屋さんに豆腐を買いに行く"あの昭和の光景!現実には難しい課題もあるわけですが、パッケージのゴミも減らせて、生産者やミルクのことも肌で感じられる"エシカルなチーズライフ"を送りたいなぁ...と個人的には思ってしまいます。
Q2. モッツァレラという名前の由来は?
チーズの名前の由来=誕生した"地名"というのが定番ではありますが、モッツァレラの場合はちょっと違います。
答えは、チーズづくりの工程にあり。
「モッツァレラ」は、パスタ・フィラータ製法というイタリア独特のチーズづくりから生まれるのですが、そのなかで「引きちぎる」という工程があります。この「引きちぎる=モッツァーレ(mozzare)」が、名前の由来なのです。
ミルクから"チーズのもと"ができ、お餅のように練り上げていきます。繊維状に引き伸ばしながら、お湯を加えて練りながらひとつにまとめていく...この工程も「パスタ・フィラータ(繊維状の生地)」という製法の特徴。モッツァレラやカチョカヴァッロが、加熱するとビヨーンとのびるのはここがポイントです。
つきたてのお餅のようなかたまりから1玉分の量を"モッツァーレ"して、丸く形を整えたら完成です。今では現地でも機械化が進んでいて、手でモッツァーレする光景も珍しくなってきています。
Q3. カットの仕方でおいしさが変わる?
モッツァレラの食べ方として、おなじみなのは「カプレーゼ」でしょう。スライスしたトマトとモッツァレラを並べたらバジルをのせて、イタリア国旗の3色に。あとは塩をかけてオリーブオイルをまわしかけるだけ!という手軽さも魅力のサラダです。
でも一番大事なのは、カットする前。モッツァレラを生食するなら、まず室温に戻すこと!冷蔵庫から出したばかりだと、冷たくて食感も固いままですし、本来のミルク感や風味が感じにくい。本場イタリアの家庭では、冷蔵庫に入れること自体驚かれる(時には怒られる)ほどです。
真空パックになっているモッツァレラなら、平行にスライスして、一般的な"スライス重ね"で盛り付け。モッツァレラの生地の食感が均一なので、問題ありません。
でも、水入りのパッケージで販売されているモッツァレラの場合は、スライスではなく、"くし形にカット"するのがおすすめ。その方が、どのピースを食べても均一な食感が楽しめるからです。
弾力があって、噛むとジュワッとミルクが溢れてくる...そんな本来の食感が味わえるモッツァレラなら、スライスよりくし形にカットで。食感もごちそうのうちです。
カプレーゼについては、【モッツァレラ 後編】でも"変わり種"をご紹介しますので、そちらもお楽しみに。
Q4. 保存のコツやポイントを教えてください。
モッツァレラは、新鮮さが命。熟成チーズではないので、豆腐や刺身と同じように、時間とともに食感も味わいも変化してしまいます。
特に"水入りのパッケージで販売されているモッツァレラ"は、早めに、そして一度に食べきるのが大原則!カットした断面からどんどんミルクが滴り出てしまいます。「一度に食べるのはもったいないから、半分はラップして...」という考えは、かえって"もったいない"ことなのです。おいしさを自分で放棄してしまうようなものです。
「食べきれず、加熱用にしたい」という場合は、ザルやキッチンペーパーを使って1時間ほど水抜きをしてからラップで包んで、冷蔵庫へ。ラップは密着させるように包みましょう。
真空パックのモッツァレラは、水抜きされているものが多いので、そのままラップしてもOK。また、輸入のモッツァレラでも、ドイツやデンマークなどでつくられているモッツァレラ(モザレラ)は、セミハードチーズのような固さでつくられていますので、これもそのままラップでよいでしょう。
繰り返しますが、ジュワッとミルクが滴ってくるようなフレッシュなモッツァレラは、できるだけ一度で食べきりたいもの。みなさんの参考になるよう、【モッツァレラ 後編】ではアレンジレシピもご紹介します。
Q5. 冷凍で保存してもよいでしょうか?
冷凍してしまうと解凍したときに水分などが抜けてしまい、食感ももとに戻らないので、生食には向かなくなってしまいます。でも、ピッツァやチーズトーストで食べる、つまり加熱用にする場合は、冷凍もひとつの方法です。
加熱用にする場合は「1回に使用する分を小分けにして、ラップに包んで冷凍する」のがおすすめ。いくら加熱用とはいえ、冷凍と解凍を繰り返すのは好ましくありません。また、最近は加熱すると伸びが良いというモッツァレラの特性を活かしたシュレッドチーズ(ピザ用チーズ)もありますので、こうしたものも"小分け&冷凍"が有効です。
丸い玉のモッツァレラは、大きなチーズではありませんので、保存方法よりも、おいしく食べるコツや方法をいろいろ会得しましょう。
【モッツァレラ 後編】では、3つの"食べきり術"をご紹介。フレッシュのまま食べきるためのアレンジレシピに加え、"半加熱"して食べる方法も登場。ぜひ後編もお楽しみください。
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